「豪州にとって中国は敵か? 味方か?」 背後に横たわる中台関係

WEDGE Infinityは7日、「豪州にとって中国は敵か? 味方か?」と題する論評を掲載した。

 

豪州にとって中国は敵か? 味方か?(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/7870)

オーストラリアにとって、南太平洋の戦略的意義は大きい。第二次世界大戦に連合軍として当初から参戦したオーストラリアにとって、日本軍に南太平洋を完全に制圧され、米国と遮断されることは悪夢だった。日本軍は実際に、米豪を遮断する作戦を立てていた(FS作戦)。ミッドウェー作戦で大敗したために米豪遮断は頓挫したが、オーストラリアにとって存亡に直接かかわる、最大の危機だったと言える。

さて、WEDGE Infinityは、中国が活発に南太平洋諸国に進出しており、オーストラリアが神経をとがらせていることを紹介しているが、中国側の意図については特に触れていない。

 

中豪両国間には南シナ海問題という懸念材料があるが、中豪関係でまず考えねばならないのは、オーストラリアが鉄鉱石や石炭などの資源国であることもあり、同国にとっては中国が最大の貿易相手国であることだ。中国はオーストラリアにとって最大の輸出相手国であるだけでなく、輸入相手国としても最大だ。

したがって、関係悪化は双方にとって得策ではない。だとしたら、オーストラリアが警戒することが明らかであるにも関わらず、中国が南太平洋地域への進出に力を入れる理由は何なのか。

編者は、中国は米国への牽制と、台湾(中華民国)外交の孤立化を狙っていると考える。まず、中国が南シナ海への進出を強めれば、米海軍も警戒の度合いを強めねばならなくなる。予算問題を常に抱える米国にとって、負担増は頭の痛い問題だ。

もう1つの狙いが台湾外交の孤立化だ。現在、南太平洋に存在する独立国は、パプアニューギニア、フィジー、ソロモン、バヌアツ、サモア、トンガ 、ツバル、ミクロネシア、キリバス 、マーシャル、パラオ、ナウルの12カ国だ。

そして、キリバス、ソロモン、ツバル、パラオ、マーシャル諸島、ナウルの6カ国が台湾との外交関係を維持している。台湾が外交関係を持つ国は全世界で22カ国だから、台湾にとって南太平洋の6カ国は「国際外交社会からの完全な締め出し」を食い止めるための、重要な意味を持っている。

 

一方の中国は、これまで以上に、南太平洋諸国との関係を密接化しようとすると考えてよい。なぜなら、中国にとって、台湾で5月に民進党政権が発足したことは「台湾における敵対勢力の台頭」にほかならないからだ。中国当局は、露骨で強引な手段を使ってでも、台湾の民衆が「蔡英文政権は、あらゆる面で失敗した」と感じる状況を作り出そうとしている。

南太平洋を舞台とする外交で、中国が台湾と国交を持つ6カ国中の1カ国と新たに外交関係を結ぶ、つまり台湾と断交させることに成功すれば、蔡英文政権は極めて深刻な打撃を受けることになる。台湾で、「現政権の下では、台湾はこれまでと同様にやっていけない」との批判や不信が巻き起こるからだ。

中国の「戦術」としては、現在も関係を構築している国の「為政者にとって、おいしい話」を次々に提案し、実行することが考えられる。いわゆる“バラマキ外交”だ。そして、その近隣国の為政者にも、中国との関係樹立や関係強化を呼びかけていく。

注目すべき点は、中国の“バラマキ外交”が、為政者の歓心を得ることを重視してきたことだ。そのため、一般大衆の対中感情は良好とは限らず、政変があった際にはそれまでの「外交政策」を取り繕うことに苦労したこともあった。

南太平洋諸国に対して、中国がこれまでと同様の「戦術」を用いるかどうかは不明。しかし、「外交攻勢」に出る可能性は極めて高い。もちろん台湾も、対抗策を講じるはずだ。台湾だけでなく、日本やオーストラリア、そして米国も、南太平洋諸国を「自らの陣営」の一員として確保する動きを強化することも、十分に考えられる。

中国の李克強首相は9月24日、キューバを訪問して滞在中に経済技術・財政金融・エネルギー・情報通信など約30項目にわたる政府間合意および企業間の契約を成立させた。22日から24日までキューバを訪問した安倍晋三首相と「入れ替わり」の格好でキューバ入りし、日本・キューバの合意事項以上の成果を実現させた。

李首相のキューバ入りは、外交における日本への対抗との意味合いもあるが、中南米における台湾への外交攻勢も背景にある可能性がある。台湾が外交関係を保つ全世界22カ国のうち、中南米にはエルサルバドル、グアテマラ、セントクリストファー・ネービス、セントビンセントおよびグレナディーン諸島、ドミニカ共和国、ニカラグア、ハイチ、パナマ、パラグアイ、ベリーズ、ホンジュラス、セントルシアと12カ国が集中している。

中国が、これらの国に「外交攻勢」を強めたとして、すぐに成果を出せるとはかぎらないが、台湾・蔡英文政権にとっては、「極めて大きな脅威」ということになる。(編集担当:如月隼人)

 

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Posted by 如月隼人