【雑記】ドイツ人はやっぱりすごいのかも、この件については中国人も失敗

18世紀に英国人がトルコで購入して本国に送ったダーレーアラビアン。現在のサラブレッドの9割がこの馬の血筋を引くという
18世紀に英国人がトルコで購入して本国に送ったダーレーアラビアン。現在のサラブレッドの9割がこの馬の血筋を引くという

サラブレッド」という言葉がありますよね。競馬用として品種改良された馬です。ただ、「サラブレッド」という言葉は、ずいぶん誤解されているようです。

「サラブレッド」が登場したのは英国です。英語の「thoroughbred」とは「thorough(完璧に)+bred(品種改良された)」で、つまり競馬馬として最良の性質を持たせるために、「かけあわせる」ことを繰り返して、人為的な「混血」に「混血」を重ねて最終的に得られた理想的な馬、ということです。

ところが、この英語が誤解された。最初に誤訳をやらかしたのはフランスみたいで、フランス語では「Pur(純粋な)+sang(血液))」です。これじゃあ、意味が真逆だ。スペイン語では「Pura(純粋な)+sangre(血液)」ですから、フランス語を参考に訳したのでしょう。ロシア語も「Чисто(純粋な)+кровная(血液)」で同じ。

で、「サラブレッド」の語は全世界で誤解されているのかと思ってしらべたら、ドイツ語は違った。「Voll(=完璧な)+blut(=血の)」ということらしい。ううむ。これはフランス語を経由していないんじゃないか。英語の意味をきちんと調べて訳したようだ。

フランスはかなり長い間、ヨーロッパ文明の中心地でしたからね。スペイン語やロシア語のサラブレッドがフランス語からの訳出語みたいになっているのは、そういう背景があるからでしょう。しかしドイツ人は違った。「サラブレッドが改良されたのは英国である。したがって、サラブレッドの語をドイツ語に訳すには、英語の意味を研究せねばならぬ」なんて調子で、まるで宇宙大作戦のミスター・スポックのように論理的に作業を進めたのではないか。もちろん、ドイツ人だってフランス語が得意な人がいっぱいたのでしょうが、「こちらが正しい」と決定した。ドイツ人、すごいなあ。

日本語でも「サラブレッド」は「純血種」と訳される場合があるから、フランス語式の誤訳を引きずっているみたいだ。

ちなみに中国語では「純種馬(chúnzhǒngmǎ)」です。これも、英語の本義とは真逆ということになってしまう。

中国人は、欧米で生まれた新たな事物や概念を導入する場合に、日本みたいに「音だけを頼りに言葉を直輸入(発音を利用してカナ書き語にしてしまう)」なんて安直なことはせずに、丹念に自国語を創出しています。その点は大いに尊敬しているのですが、「サラブレッド」の訳語創出については、失敗しちまったなあ。