ふと気づいてしまった事実…中国では犬の鳴き声にも「声調」があった

中国では犬の鳴き声も漢字で表わす。サンズイに「王様」の「王」と書く。読み方は「ワン」なのだが、ただの「ワン」ではない

中国語を学ぶ際に、発音について多くの人が苦労することがあります。「声調」です。いわゆるイントネーションですけど、「一つの音節」にイントネーションがあるのが特徴です。

「音節」というのは要するに、日本語だったら「あ」とか「か」とか「ざ」とかのかな1文字、場合によっては「きゃ」みたいに、小さな「ゃ」「ゅ」「ょ」をさらにくっつけて表す「一つの音」と考えてください。

日本語の場合、単語としてはイントネーションがあります。東京の言葉ならば、「はし」という語で「は」を高く言えば「箸」ですし、「し」を高く言えば「橋」あるいは「端」と、意味が違ってきます。

中国語の場合、音節ごとに声調、つまりイントネーションがあって、それが中国語の発音にとってとっても大切。日本語でも大阪の言葉なんかには、1つの音節にイントネーションがあったりしますけど、これは例外と言っていいんじゃないのかな。

私は中国で生活していた時期、友人夫婦に赤ちゃんが生まれたので、お祝いのためにお宅に行ったことがあります。生後半年かもう少しあとだったかな。赤ちゃんがいる寝室に通される際に、その中国人の友人が「どうも、言葉みたいなものを言い出したようなんだ」と嬉しそうに言う。

「マ…マ…」なんて風に言うのだろうか。そう思ったのですが、その中国人の赤ちゃんは「アー」みたいな母音しか発声しないのです。母音としても、あんまりはっきりしていない。でも、なんとなく声調みたいな抑揚がついている。音を高めに維持する一声、中ぐらいの高さから高い音に跳ね上げる二声、高い音から低い音に一気に落とす四声は、割としっかりと聞き取れました。

「なるほど、中国人は言葉を話すのに、声調から始めるのか」と思いました。そりゃあ、外国人が中国語を学ぶ際に声調の感覚を身に着けるのに苦労するわけだ。

さて、中国語で使う文字は基本的に漢字だけです。ですから、例えば動物の鳴き声も漢字で表わします。犬の場合には<汪>です。もちろん、「ひと声鳴いただけで終わり」なんて場合はそうは多くないので、<汪汪!>なんて書いたりします。<汪>の発音は「wāng」です。

「汪」という漢字は、姓を表わす文字としても使います。でも、人の姓としても一般名詞としても「汪」よりは「王」の方が“知名度”が圧倒的に高い。「はて? 犬の鳴き声にはどうして『王』を使わず『汪』を使ったのだろう?」と、先ほど思いあたってしまったわけです。

約2秒後に、理由が分かりました。「王」の発音は wáng です。中程度の高さから高い音に跳ね上げるように発音する。犬はそんな風に吠えていない。つまり、犬の鳴き声に「王」は使えなかったわけです。中国では犬の鳴き声にも「声調」があったのでありました。

笑う柴犬

Posted by 如月隼人