雑感:仕事における「勲章」ということ

まあ、人というものは、ある程度の教育/訓練期間を経たのちに、「仕事」なるものに従事するのですよね。生活の糧を得るためという大目的がありますが、仕事を通じて社会とかかわるという人の生き方の根幹を実現することになります。

仕事をしていれば「なかなか、ない」というファインプレーをすることがあるかもしれない。周囲から称賛される。ただ、それほど目立たない、というか他人はほとんど記憶にもとどめない「自分だけが知るファインプレー」もあると思うのですよ。

本日はなんか、ぼやぁっと考えていて、思い出したことがあります。大昔になりますが、私が音楽関係の仕事を、それなりにしていた時期のことです。

中国人のソプラノ歌手が、日本のレコード会社でCDを制作することになった。私も呼ばれて、録音現場にいた。もとの楽譜では、中国の民族楽器のアンサンブルの伴奏でしたが、その録音ではピアノ伴奏にアレンジされていた。

スタジオの調整室にいて、ガラス越しに演奏の様子を見ながら、スピーカーから流れる音を聞いていた。と、ピアノが妙な音を出した。あれれ? と思いました。

とりあえず、その曲の演奏終了を待って、ピアノのところに駆け寄って、楽譜を確認しました。ピアノ奏者のミスではない。楽譜の通りに演奏していた。

でも、この音で本当か、と思いました。そこで、プロデューサーに対して、楽譜の確認を申し出ました。要するに原譜として渡されている、アンサンブルの楽譜と、アレンジしたピアノ伴奏譜の照合です。調べた結果、アレンジのミスが分かった。

ト音記号とヘ音記号の勘違いでした。音程にして3度の違いですから、まあ、大丈夫と言えば大丈夫。協和音が不協和音になったりはしません。ただ、和音の感覚が強い人は「あれ?」と思うかもしれない。

私は、中国音楽を勉強していましたし、中国伝統音楽だけでなく、それを現代的にアレンジする流儀についても調べていた。だから、「あれや? 伝統音楽を西洋音楽の方法を取り入れて編曲したとしても、この和音を使うわけないだろ」と直感した。

まあ、自画自賛になってしまいますが、リスクを承知で録音ストップを中断したことで、分かる人には分かってしまう、みっともないCDを世に出すことを食い止めることはできた。まあ、仕事における自分自身が誇りに思う勲章とは、こういうことなんでしょうねえ。

 

わずかではありますけど、私も経験があるということです。


Posted by 如月隼人