中国政府がバチカンとの関係改善を強調 台湾巡り外交攻勢

中国政府・外交部(中国外務省)の華春瑩報道官は26日の記者会見で、バチカンとの関係改善が進んでいることを承認した。バチカンは欧州で唯一、中華民国(台湾)を承認して中国との外交関係のない国だ。バチカンと中国が国交を樹立すれば、台湾は承認国をまた1つ失うことになる。

華報道官は27日から29日まで中国カトリックが第9回全国代表大会を開くことについて、「この会議開催が、カトリックがさらに1歩、中国の文化と社会に溶け込むことを推進し、中国においてカトリックが聖書と福音の事業を健全に安定して発展させることを促進すると信じる」と述べ、中国におけるカトリックの活動について高く評価する考えを示した。

華報道官は中国とバチカンの関係について「われわれは終始、改善について誠意を持ち続けてきた。たゆまぬ努力もしてきた。われわれはバチカンとともに努力して、同じ方向に進み、双方が建設的な対話を進めて関係改善の道筋で不断に新たな進展を得たいと望んでいる」と述べた。

現在、中国とバチカンの関係正常化を阻む最大の原因は、中国側が中国国内の司教にたいするローマ教皇の任命権を認めていないことだ。中国は国内組織に対する外国の干渉や影響力行使を極端に忌避することを貫いてきた。キリスト教の場合には清末から「帝国主義の侵略行為の先導役を果たした」との認識もあり、さらに国共内戦時から中華人民共和国成立した当初は、バチカン側が西側勢力の一員として、中国に露骨な干渉をしたと主張。多くの司教などをスパイとして摘発した。

その後中国では、中国天主教愛国会(天主教は中国語でカトリックの意。プロテスタントは基督教)が設立され、共産党・政府の「公認」の範囲内で活動することになった。そのため中国におけるカトリックは、「カトリックの信仰を持ちながら、ローマ教皇とは切り離された存在」という異常な事態が続いている。

中国における司教の任命については「形式的にはバチカンが任命するが、中国当局があらかじめ示した人選のリストの範囲内で人選を行う」との方式になる可能性が高いとの声出ている。

中国がバチカンと国交を樹立すれば、バチカンは中華民国(台湾)の国家承認を取り消すと考えられる。
最近では、アフリカ西部の島国であるサントメ・プリンシペが中華民国との国交を断絶し、中国と国交を結んだ。同時点で、中華民国を承認する国は全世界で21カ国になった。

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◆解説◆
中国はこのところ、台湾と国交を持つ国に対する「外交攻勢」を強めている。台湾・蔡英文政権の威信を失墜させることが狙いと考えてよい。

仮に、バチカンが中国と国交を樹立し、台湾と断交しても、台湾が受ける経済など「実務面」の打撃は大きくない。しかし、宗教的に大きな権威を持ち、欧州で唯一の承認国であったバチカンを失うことは、台湾にとって大きな打撃だ。

しかし、中国とバチカンが国交を樹立したとしても、中国にとっては「諸刃の剣」の側面があることも事実だ。まず、バチカンが中国との対話に積極的になったのは、2013年に就任したフランシスコ教皇の意向が働いているとされている。バチカンの姿勢は教皇の考えに大きく左右されるが、これからの教皇の意向が中国との関係重視とはかぎらない。

仮に国交が樹立されれば、ローマ教皇による中国の諸政策に対する批判が、さらに大きく注目されることになる。中国がバチカンの容認できない政策を断行した場合、国交再断絶とまではいかなくとも、「大使の一時引き揚げ」など、バチカン側が講じることのできる選択肢はより増えると考えられる。その場合、世界における中国に対する「違和感」はさらに大きくなり、中国当局は国内向けの説明にも苦労することになる。(編集担当:如月隼人)

 

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