フィリピンの米国離れがより鮮明に、中国の「政権支持外交」が奏功

中国メディアの環球網などによると、フィリピンの新任駐中国大使であるロマーナ氏は2日、自国は長年の同盟関係にあった米国から離れ、中国との関係正常化に向かう外交戦略を立てていると述べた。

ロマーナ氏は、「米国との同盟関係を放棄しようと考えているわけではない」、「対中関係を正常化しようとしているだけ」と論じた上で、 「問題は、米国がわれわれに説教したことで発生した。(ドゥテルテ)大統領は(西側諸国から重大な人権侵害と批判される強引な犯罪撲滅運動を)内政問題と考えている。中国人は他人の内政に対して、あれこれ言わない」と述べた。

これまれ中国と対立してきた南シナ海の問題については、中国との共同開発についてフィリピン政府は開放的な態度と説明し、中国側も「われわれを友好的な隣国とみなしている」と述べた。

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◆解説◆
ある国が他国との関係を緊密化したい場合、最優先するのは自国の国益だ。ただし、経済面や外交戦略上、接近が得策であっても、実現できない場合がある。相手国の状況が、自国が持つ価値観と両立しない場合だ。

まず第一に、政権担当者として自国の価値観に極端に反する相手とは友好関係を結べないということがある。西側諸国の場合にはさらに、相手側政権を容認する外交方針を採用した場合、自国内での選挙に勝てない、つまり政権維持ができなくなるという現実における問題が生じる。

中国の場合、国際社会で非難される国との関係を緊密化する上に「平和五原則」を“切り札”として用いてきた。平和五原則は中国の周恩来首相とインドのネルー首相(いずれも当時)が1954年に合意した外交関係樹立のための基本原則で、内容は「領土・主権の相互尊重」」、「相互不可侵」、「相互内政不干渉」、「平等互恵」、「平和共存」だ。

このうち「相互内政不干渉」は、「社会主義国と資本主義国は、相手の体制を承認することはできないが、相手国の体制は相手国の内政問題なので、その問題を抜きにして共存できる関係を構築できる」との主張だった。

しかし中国は改革開放政策の全面化以来、人権問題などで国際的に強く批判されている国との関係構築の際に、「内政不干渉」を強調するようになった。例としてはイランやリビア、ミャンマーがある。いずれも石油や天然ガス資源、ミャンマーの場合に陸路によるインド洋到達を求めての関係構築だった。

フィリピンの場合、南シナ海の権益問題においてベトナムと並んで最も先鋭的に対立していたのが同国だったという事情がある。2016年に発足したドゥテルテ政権に対しては、麻薬犯罪などの撲滅で米国などでは「人権無視」との非難が高まっているが、中国は「それは内政問題」と不問にする姿勢だ。

ドゥテルテ政権にとってみれば、経済における恩恵が中国から得られれば、米国との密接な関係を維持せねばならない必然性はなく、南シナ海問題についても自国における反発を一定限度内に抑えることができれば、大きな問題はないことになる。

ただ、中国の「内政不干渉」の外交方針は、不安定な面もある。相手国で政変が生じた場合、新政権との関係構築に支障が出てくるからだ。リビアのカダフィ政権が崩壊した際、中国外交は相当に苦労した。ミャンマーの場合も、中国企業の同国における地位は低下することになった。

フィリピンのドゥテルテ政権の親中姿勢も、「当面は中国に接近した方が、やりやすい」程度の、比較的表面的な理由に根差すものと理解できる。(編集担当:如月隼人)

 

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