ユーゴスラビア娘との思い出(1)アニーはなぜか真剣だった

以下は、あくまでも私の記憶にもとづく記述です。「うそ」はないはずですが、なにぶんにも少々昔の話なので、思い出の中で少々“美化”されてしまった部分があるかもしれません。その点は、ご容赦ください。


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再び、中国に留学していた時の思い出です。私が最初にいた北京語言学院(北京語言大学)というのは、世界中から留学生が集まってくる学校です。中国では学年が秋に始まります。8月下旬ぐらいに、新入生もぼつぼつ集まってくる。


中国語を学ぶためにその学校にいたはずなのですが、なぜか英会話ができるようになった。まあ、聞いてください。世界各国から留学生が集まって来ますよね。大部分が中国語の初心者。というか、勉強した経験がまったくない学生がほとんど。自然に英語で話すようになるんですよ。


私はといえば、学生時代に「それなりに頑張った」程度で、英会話の授業を受けたことなんかない。でも、アフリカとかインドとかパキスタンとか東欧とか、いろんな国の人がいる。こりゃあ、めったにない機会だと思い、できるだけ彼らと話すようにしました。


もちろん、とてつもないブロークン。LとRの区別もいい加減。初対面の相手と話はじめたとたんに「お前は、日本人だろう」と言われたことがある。イタリア人でした。でも「かまうこたあない」と思いましたね。英語を母語にしている奴なんかひとにぎりだ。かなり目茶苦茶な英語を話す学生もいる。「アイ・フォー・スタディー・エコノミー・チャイナ・カム」なんて、堂々と話すモンゴル人もいた。「経済を勉強しに中国に来た」ということです。モンゴル語とほぼ同じ語順に英単語を並べただけですが、十分に理解できました。


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そうそう、ユーゴスラビア人の女子学生の話です。仮に名前をアニーとしておきましょう。アニーは結構上手に英語を話し、それまでも教室や廊下でいろいろと話をした。そのアニーがなぜか、私の部屋にやってきた。


恋人でもない女性と2人で部屋にいる時は、ドアを開けておくというのがマナーらしいので、ドアをそのままにして部屋にいれたら、なぜか自分で閉めてしまった。ちょっとヘンと思ったけど、ユーゴスラビア人はそうなのかなと思いました。


アニーは20台前半だったはずですが、日本人からみると、ずいぶん「成熟した女性」の雰囲気でしたね。金髪で目はブルー。体も大きくて「堂々たる東欧美女」といった感じでした。そのアニーがベッドの端に座り、「私にはひとつプロブレムがある」などと言い出したのです。


あ、アニーがベッドの端に座ったことですが、たいして大きな部屋でもなく、ベッドがどでんと置いてあったわけです。椅子と言えば、粗末な木の椅子がひとつあるだけ。しかもガタピシ。どちらを勧めてよいか分からないので、あいまいに椅子とベッドの間ぐらいを指したら、ベッドの方に座ったというわけです。


で、どんなプロブレムかと聞いたら、アニーは「マイ・ラブ」なんて言い出した。何でいきなり、そんなことを言い出すのだろう。聞きとりミスではないだろうな。問い直してみても間違いではなかった。そして続けて「ユーゴスラビアの女の子が日本人の男の子を好きになったと想像して……。彼女の心の中に、どんなことが起こると思う?」なんて言い出した。


いつもは冗談ばかり言っているアニーが、妙に真剣だ。こちらを見つめている。いったい、何を言いたいのだろう。私はアニーの意図をはかりかね、少々、混乱してしまいました。(つづく)