中国軍上層部で人事異動が相次ぐ 秋の共産党大会念頭に習近平主席が権力固めか

中国軍上層部で人事異動が続いている。異例の抜擢も目立つ。秋に開かれる予定の共産党大会を念頭に、習近平国家主席(共産党総書記、中央軍事委員会主席)の権力をさらに強固なものにしようとの思惑が働いている可能性が強い。

17日には、南海艦隊司令員(司令官)だった沈金龍中将が、海軍制服組トップの海軍司令員に就任した。沈海軍司令員は2016年7月に中将に昇格したばかりだった。他の例を見ても、人事異動の「下準備」は16年夏ごろの始まっていたと思われる。

また、昨年(16年)1月に新設された中央軍事委員会国防運動部の政治委員だった朱生峰中将が、18日には武装警察隊の政治委員として活動していたことが分かった。武装警察隊は政府・公安部の所管だが中央軍事委員会に指導されており、軍の一部分である性格が強い。重要な任務は暴動鎮圧、反テロ、金山の警備、森林の保護や警備、治水など。政治委員は軍の各組織で共産党の意向反映を徹底させる官職で、組織トップの司令員の命令を拒否できる場合もある。朱中将も16年夏に少将から中将に昇格した。

1月21日までには中央軍事委員会訓練管理部長だった鄭和中将(16年夏に昇格)が人民解放軍軍事科学院院長に就任した。同院の蔡英挺前院長は、江沢民元国家主席の系列に属する人物とされる。習近平主席はもともと軍関係者のつながりが薄かったが、福建省長を務めた経験がある関係から、福建の陸軍31集団とは関係が深いとされる。鄭中将は陸軍31集団の出身だ。

南部戦区空軍政治委員だった安兆慶中将(16年7月に昇格)は1月20日に行われた神舟11号(16年10月17日から11月18日まで有人宇宙飛行)の乗組員に対する表彰式に、中央軍事委員会装備発展部政治委員として出席した。さらに陸軍政治工作部主任だった張書国中将(16年7月に昇格)は南部戦区政治委員に就任した。

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◆解説◆
習近平政権は2014年から15年にかけて中央軍事委員会の徐才厚前副主席と郭伯雄前副主席を収賄や職権乱用などの罪で訴追した(徐氏は15年にがんで死亡、郭氏は無期懲役が確定)。両氏が中央軍事委員会入りしたのは江沢民政権時代で、胡錦濤政権が発足してからは同委副主席として、軍上層部における強大な抵抗勢力の「中核」となった。

徐・郭両氏に近い軍上層部の人脈は、現在も「生きている」と考えるのが妥当だ。また胡錦濤前主席も、政権晩年には自らに近い軍人を抜擢している。習近平主席は信頼できる人物を引き立てることで、軍における権力と権威の浸透を図っていると考えられる。

ただ、16年夏に中将に昇格させた軍人を17年になってから要職に就ける方法は、同年秋の共産党大会に間に合わせねばならないという「焦燥感」の現れであるようにも見える。習近平政権が現状において軍内部でどこまで権力を固めているかについては疑問も残る。一方で、この時期になって大量の人事を実施したことは「反発があっても抑え込める状況に達した」との判断の結果とも考えられる。いずれにせよ、習近平政権の安定の度合いは極めて分かりにくい状況が続いている。(編集担当:如月隼人)

 

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