「無差別拘束で妊婦もマラリア患者もいた」 中国外務省がザンビアに抗議、両国関係の維持には配慮

中国政府・外交部非洲司(中国外務省アフリカ局)の林松添司長が4日、ザンビアのバンダ駐中国大使代行と緊急会談をして、ザンビア・カッパーベルト州当局が中国人31人の身柄を拘束したことについて「無差別であり、(拘束された中国人の)うち1人は妊婦で2人はマラリア患者だ」などと抗議した。ただし中国側の発表には、ザンビアとの関係を維持する配慮がみられる。

ザンビア当局は銅鉱石を違法に入手したとして1日、現地在住の中国人31人を拘束した。31人は現地の民間会社7社に所属していたとされる。

林司長はバンダ大使代行に対して「中国はザンビアが鉱石の盗掘など違法行為を取り締まることは理解し、賛同する。ただしザンビア側は確固たる証拠を示しておらず、公務執行証も提示せず、無差別に中国人を逮捕する行動を展開した。(拘束された中国人の)うち1人は妊婦で2人はマラリア患者だ」と主張。

さらに「中国側は重大な関心を持ち、断固として反対する。ザンビア側が早急に上記事件を法にもとづき適切に解決し、中国国民の正統な合法権益を保証することを希望する。無実の者を早急に釈放することを望む。同時に、拘束中の中国人、特に妊婦とマラリア患者に対しては人道主義にもとづく待遇をして、中国・ザンビアの友好協力関係の雰囲気を(中国と)ともに維持することを希望する」と述べた。

バンダ大使代行は中国の立場と関心を理解し、大使館として中国側の意見極めて重視し、ただちに本国政府に報告すると説明。ザンビアとしても両国関係を大切にし、中国側と密接に協力しながら、事件を適切に解決すると述べた。
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◆解説◆
中国(中華人民共和国)は建国後の早い時期からアフリカとの関係を重視してきた。米ソという二大大国と対立し、結果として西側諸国とほとんどの社会主義国とも対立した中国にとって、開発途上国(第三世界)との関係構築は国際社会における生き残りのために重要だった。さらに、台湾に逃れた中華民国と対立していた中国にとって、1960年代から次々に独立した旧植民地国と外交関係を樹立することは中華民国に対して優位に立つために欠かせなかった。

ザンビアは英国統治下で北ローデシアと呼ばれた地域で、1920年代には膨大な埋蔵量を持つ銅鉱が発見され、産業化が始まった。第二次世界大戦後の1953年には南ローデシアを含む地域にまたがる英国保護領のローデシア・ニアザランド連邦が設立された。しかし白人優遇政策であったために黒人の不満が高まり、北ローデシアはザンビアとの国名で1964年10月25日に独立。中国は5日後の10月29日に同国と国交を結んだ。

南ローデシアは「ローデシア」として1965年に独立。ローデシアは南アフリカと同様なアパルトヘイト(人種差別)政策を採用としたため国連の制裁で経済封鎖された。すると、内陸国のザンビアはローデシア経由で行っていた銅鉱石の輸出ができなくなり、経済的に立ち行かなくなった。

手を差し伸べたのが中国で、ザンビアからタンザニアのダルエスサラーム港までの鉄道「タンザン鉄道」の建設を提案。タンザン鉄道の全長は1859キロメートルで、中国は無利子の借款や3万人以上の労働者を提供した。鉄道の完成は1976年で、タンザニア・ザンビア両政府に引き渡された。

タンザン鉄道の建設期間は、中国の文化大革命期とほぼ重なる。つまり中国は自国内が大混乱し、経済的に疲弊しきっていた時期に「アフリカの友好国支援」を遂行したことになる。

中国では現在でもしばしば、多くの困難を乗り越えて完遂されたタンザン鉄道建設事業が語られる。同事業は中国が一貫してきた「正義の外交」のシンボルとしての位置づけだ。

したがって、現在の中国当局にとってもザンビアとの関係悪化は避けたい。中国は一方で、海外で自国民が窮地に陥った場合には、国を挙げて救援対策に乗り出してきた。国内向けに、自国政府は頼れる存在とアピールする政治的狙いもあると考えてよい。

したがって、中国当局にとって中国人31人の拘束は極めて慎重に扱わねばならない問題だ。4日にはザンビア代表を呼び出した格好だが、発表では「呼び出し」の語を使わず「緊急会談」と表現した。発表された写真からは、会談が行われた場所が「中国側施設内」であることが分かる。また、双方が誠意をもって話しあっている雰囲気の画像だ。

林司長はザンビア側の措置に強く反発しながらも「友好協力関係の雰囲気を維持」と表明。中国が続けてきた「正義の外交」を印象づける言い方になっている。(編集担当:如月隼人)

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