父の形見は「手りゅう弾」、迷い抜いた息子が選んだ行動とは

老いた男性は、力なく横たわっていた。枕元には息子がいる。男性は息子に向かって弱々しい声で話した。「お父さんはもうだめだ。お前には何も残してやれなかった。だがな、これだけはしっかりと持っていておくれ」――。息子が手渡されたのは手りゅう弾だった。

安徽省淮北市濉溪県公安局(県警)が19日、微博(ウェイボ―、中国版ツイッター)の公式アカウントで紹介した。手りゅう弾を託された男性は、父親が他界してからずっと悩んでいた。なんかの拍子で爆発たらどうなるかと怖かった。濉溪県警は「不安感が爆発」と表現した。

中国では一般人が軍用銃器や銃弾、砲弾を保有していることが多い。過去の混乱期に何らかの経緯で流出したものがそのままになっている状態だ。

もちろん違法行為だが、警察が実施する「回収キャンペーン」に応じたり、自主的に警察に引き渡した場合には責任を追及されないことが一般的だ。

男性は、父親の形見である手りゅう弾を捨ててしまおうとも思った。しかし、そんなことをしたのでは地下に眠る父親に対する「不孝」ではないのか。

男性は悩んだ末に、居住地区を担当する警察官に相談した。4月25日だった。警察官は諄々と、手りゅう弾を持っていることが違法行為であり危険でもあると説いた。男性はようやく、手りゅう弾を警察に提出することにした。

警察はすでに、手りゅう弾を「適切に処理」したという。
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◆解説◆
男性の父親がなぜ、手りゅう弾を持っていたかは不明。ただ中国ではかつての対ベトナム戦に従軍した人などが、砲弾の一部を「記念品」として持っていることがある。

手りゅう弾の扱いを顔見知りの警察官に相談した男性の心理状態は興味深い。警察官ならまず間違いなく、「警察に提出すべきだ」と言うはずだからだ。

中国人の性格には、強烈な自己主張とトップダウンの方針決定に「安堵」する傾向が同居する矛盾がみられる場合が多い。

 

中国で現地法人を営む企業人から「中国人の部下は自分なりの考えを持っていても、上司である私の指示を待っている場合があった」と聞いたことがある。「部下に花を持たせようと正式な提案を待っていたのでは、能力のない上司と思われる場合がある」という。

手りゅう弾を持っていた男性は、自分の意思で決定することを避けようと、結論は分かっていたとしても顔見知りの警察官に相談したと考えられる。(編集担当:如月隼人)

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