北京市郊外の「九大スーパーグルメ」(9)延慶・水泉子の「アヒル鍋」

北京市北西部郊外の延慶区では「アヒル鍋」も有名だ。区内でも本場中の本場は珍珠泉郷水泉子村とされる。珍珠泉郷は皮蛋(ピータン)用のアヒルの卵、それも良質な卵の産地として知られている。よい卵を作る秘密は、飼育法にある。人工飼料などを与えるのではなく、アヒルは自分で川を泳ぎ、自分で魚を捕って食べる。餌が違えば、卵の味が違うのは当然。卵だけでなく肉も美味になるのは理の当然だ。

「アヒル鍋」には、カボチャ、インゲン、山菜なども入れる。味だけでなく栄養バランスも抜群だ。延慶区とその周辺では、花卉類の生産も盛んだ。それぞれの花の開花時期になれば、あたり一面「花の海」と化す。「アヒル鍋」で満腹したら、「花の海」に足を運ぼう。口福の次には、「眼福」を満喫できるはずだ。

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◆解説◆
北京のアヒル料理と言えば、「北京烤鴨(ベイヂン・カオヤー=北京ダック)」が有名だが、この料理は歴史的に見れば、中国の「南北折衷料理」ということになる。

アヒルの飼育がもともと盛んだったのは、温暖で水の豊かな中国の南部だった。中国南部では宋代までにアヒルの肉を大きなかまどであぶり焼きにする「烤鴨」の料理法が発達していた。モンゴル人の興した元朝が13世紀に南宋を滅ぼした際、首都の臨安(現・浙江省杭州)から多くの技術者を北方に連れ去った。腕のよい調理師も技術者として首都の大都(現・北京)に連れてこられた。彼らが「烤鴨」の技法を本格的に中国北部に伝えられたとされる。

一方、「北京ダック」では、あぶったアヒルの肉を小さく切って、薄餅(バオビン)という小麦粉で作ったクレープ状の皮に巻いて食するのが一般的。小麦粉や雑穀を主食にするのは中国北部の伝統で、アヒルに限らず、さまざまな「おかず」を薄餅に巻いて食べることも多かった「北京ダック」はつまり、中国南部の調理法と北部の食べ方が合体した料理と言える。

中国南部には現在も、アヒルの肉をかまどであぶる「烤鴨」と呼ばれる料理が伝わっている。最近では「北京ダック」の影響で薄餅が供されることもあるようだが、本来は薄餅にくるんで食べる習慣はなかった。(編集担当:如月隼人)

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Posted by 如月隼人