雑感:「台湾の帰属問題」 考えれば考えるほど妙な結論・気分になる

先ほど、中国共産党大会に「台湾からの代表として初めて、台湾生まれの台湾人がなった」という記事を書きました。ううむ。台湾の帰属問題(あるいは独立問題)は、考えれば考えるほど妙な結論、そして妙な気分になります。

問題は結局のところ「台湾は独立国なのか、中国の一部なのか」ということになります。そして「すでに事実上の独立」との認識に立てば、「現状維持でよい(中国との関係が面倒だから)」あるいは「憲法改正などで、形式的にも独立すべきだ(中国との関係はとても面倒になりそうだけど)」、などの意見の違いが出てきます。

 

あるいは「最終的には統一を目指すが、今の中国と統一したらエラいことになる。だから現状(事実上の独立)を維持」との意見も成立します。台湾では完全に少数派ですが「現状は容認できない。即刻統一」の主張も論理的には成立します。

 

私としての大原則は、台湾の帰属問題は「台湾人の総意にもとづくべき」です。ここでいう「台湾人」とはは「中華民国国籍保有者」です。何しろ、少数とは言え中華人民共和国の「国籍」を取得した台湾人もいますから。もう少し厳密に言えば「中華民国の国籍を保有する有権者」と言った方がよいかな。要するに「現場の意思を最大限に尊重」です。

 

仮にですが、「台湾人の総意」が「中国との統一」になった場合、日本人は自国の国益と矛盾すると思っても、にっこり笑って「そうしてください」と言わねばならないということです。

 

さて、ここで仮に、台湾人の総意として「中華人民共和国の一部となってもよいかな」という事態になることを想像します。どのような場合に、そのような事態になるのか、思考実験するわけです。想像するのはものすごく難しいけど想像してみる。

例えば大陸が完全に民主化されて、しかも社会が安定した場合。台湾では独立の主張が根強いわけですが、「独立のための独立」ではないと考えます。大陸の事情を知るにつれ「あんな国の一部になるなんて、まっぴらごめん」ということでしょう。だとしたら、大陸側が台湾と同様の社会になれば「商売もしやすくなるし、同じ国でもよいかな」と思う人が多くなるかもしれない。

大陸側の台湾に対する「上から目線」も解消されねばならないでしょうね。というか、台湾人の心情を理解する能力が必要と言うべきかな。何しろ、現状では台湾の地位問題について「台湾人を含む中国人全体の意志にもとづくべき」だなんて、発言が飛び出しています。要するに「数で勝負してみろ」と言っているわけで、こんな発想をする国の一部になりたいとは、なかなか思えない。

「民主主義の原則は多数決」ということもありますが、現場の事情や当事者の心情を理解できない多数決は、「数の暴力」とも言える(この点、沖縄問題もよく似た構造をしていますが)。

要するに、大陸側が、台湾人が思い浮かべるところの「普通の国」にならなければ、大多数の台湾人は「中国の一部でもよいかな」と思えない。これまでのことがあるから、人権や民主などをより尊重する「普通の国の中でもかなり優等生」と思えなければ、中国が主張する一国二制度なんかを受け入れるのは無理。

と、ここまで考えて妙な気分になってしまったわけです。仮に、仮にですけど、中国がそんな国に変化した場合、「どうしても台湾を中国の一部として統一したい」という強い願望が継続しているのかどうか。仮に中国がそんな国になったとしたら「台湾の帰属は台湾人の意思にまかせましょう」といった発想になるのではないかな。どうも、妙な具合だ。

それから、「一つの中国」の論者は、「同じ民族なのに国が分断されているのは不自然」と主張しますけど、これは絶対の論拠になるかな。例えば米国と英国。米側は英国の実効支配下にある状況で「植民地独立」に動いたので(もっとも東海岸の一部でしたが)、戦争になりましたが、ほどなくして「よい関係。大人の関係」を実現させた。

そして、現状を見ても「同じアングロサクソン民族」であるのに、米英統一の動きは出ていません(米国も、最近では英国もアングロサクソン以外の国民がいっぱいいるのですけど、ここでは考えないことにします)。

考えてみれば、台湾に「中華民族」の人々が移り住んだのは17世紀ごろからだ。つまり、移民の国だ。そして、そういう国で「統一は民族の悲願」というのも妙な話です。そんなことを言ったら、ブラジルはポルトガルと統一されねばならないし、ブラジル以外の中南米の国はスペインとの統一を目指さねばならない。

移民の国以外でも、ドイツ民族はオーストリアやスイスの一部に分布しています。民族人口の最も大きいドイツの人が「ドイツ民族の統一を」なんて言い出したら「お前はナチスの残党か!?」てなことになる。

「統一は民族の悲願」との言い方に説得力が全くないとまでは言いませんが、絶対の理由にはならない。ということで、中国側が本気で台湾の統一を考えているなら、台湾社会で「それもいいかな」という雰囲気が徐々にでも強まるような言動を示さねばならない。ところが現状では、「中国はエゲツナイ国だ」との印象を強めることが多すぎる。不思議不思議。考えるほど妙な気分になってしまう。

 

PS:

今回の文章は「仮に」が多かった。かなり無理のある思考実験だったかもしれない。

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