国慶節連休の行楽、絶滅危惧種のチベットカモシカをオフロード車で追い回す=中国

中国では6日ごろからインターネットで、絶滅が危惧されるチルー(チベットカモシカ)をオフロード車で追い回してひき殺した者がいるとの情報が出回った。中国中央電視台(中国中央テレビ)などが報じた。

チベット自治区林業庁は8日、現地の森林警察と保護区管理部門担当者は6日と7日に現地で大規模な調査を行ったが、死傷したチルーは見つからなかったと発表。しかし車でチルーを追い回したのは事実として、オフロード車に乗っていた7人それぞれに罰金1万5000元(25万5000円)を科したと説明した。

発表によると、オフロード車2台に分乗していた7人は4日午後5時20分ごろ、チベット自治区北部のナクチュ地区で公道から離れ、セーリンツォ国家級自然保護区のチルー生息地に入って車でチルーを追い回し、その様子を撮影した。時間は約1分間だった。

オフロード車に乗っていた7人は、野生動物保護法や陸生野生動物保護実施条例、自然保護区条例に違反し、自然保護区で許可なく公道を離れ、野生動物の生息を妨害したなどとして、それぞれ罰金1万5000元を科せられた。

また、保護区管理部門の一部職員も、2017年の優秀勤務評価の対象に選ばれる資格を剥奪され、基本補助金を3カ月停止されるなどの問責処分を科せられた。

同事件が発覚したきっかけは、草原にいたチルー十数頭の群れの中に突っ込み、追い回す様子がインターネットに投稿されたことだった。投稿者は不明だが、チルーを追い回した7人のうちのいずれかだった可能性が高い。インターネットでは続いて、保護せねばならない希少動物を「ひき殺している」として同件を問題視する声が高まった。

インターネットでは、チルーを追い回していたと見られるオフロード車がチベット自治区内の宿泊施設に停められているとする写真も投稿された。現地警察は宿泊施設を調べたが、車はすでに去った後だった。しかし警察が設けた検問でオフロード車を発見し、6日午後5時には関係者の身柄を拘束できたという。

 

事件が発生したのは10月1日の国慶節(建国記念日)に始まった連休中だった。ラルーを追い回した7人は自動車旅行の途中だったとされる。それ以上の情報は報じられていないが、チベット自治区外かの都市部からの旅行者だった可能性が高い。

チルーはかつては100万頭以上が生息したと見られているが、環境の悪化や狩猟/密猟などで個体数が激減した。1995年時点でははチベット自治区内に5万頭程度しか残っていなかったとされる。ただし最近になり厳しい保護策が実施されていることもあり頭数は回復傾向にあるとされる。

中国中央電視台によると、国際自然保護連合や世界自然保護基金が定める野生動物の絶滅危機の度合いを評価するレッドリストはチルーについて2016年、それまでの「絶滅危惧種」から「近危急種」へと評価を引き上げた。
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◆解説◆
同件は、インターネットで関心と批判が高まって多くの人が情報を投稿し、当局が追随する形で事態が進行した。野生動物の保護を重視する人の存在が、事件が広く知られ容疑者の身柄拘束に結びついた点で、人々の良心が結実したと評価できる。

しかしインターネット情報の問題点も浮き出た。まず、チルーがひき殺されたとの間違った情報が広また。多くの人が問題視することにつながった「怪我の功名」もあったが、事実でない情報が広がったことは、や貼り問題だ。しかも、事件発生は5日とする情報もあった。さらに、事件発生は青海省のココシリ国家級自然保護区との見方があった。

メディアもインターネット情報に準じて報道していたので、ココシリ国家級自然保護区管理局は6日、取材に応じて保護区内でラルーの死傷はなかったと回答するなど、情報が錯綜(さくそう)した。一連の情報が「フェイク」だったとまでは言えないが、事実とは異なる情報が独り歩きしかけたことになる。(編集担当:如月隼人)

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Posted by 如月隼人