習近平政権、3選禁止の憲法改正でさらに長期化の可能性―中国共産党が1月中に会議

中国共産党中央政治局が12月27日に会議を行い、2018年1月に北京市内で同党中央委員会全体会議(中全会)を開催することを決めた。テーマは憲法改正についての討議とした。現行憲法で禁止されている国家主席の三選禁止を撤廃し、習近平政権の長期化を目指すとの見方も出ている。
▼ 習近平氏が在任期間の慣例打破を目指す可能性
 
中国の現行憲法は82憲法と呼ばれている。1982年12月の改正によるもので、それまでの文化大革命色を可能な限り払拭したことが特徴だ。一部の改正は1988年、93年、99年、2004年にも行われている。2017年春ごろには米国議会系メディアのRFA(ラジオ・フリー・アジア)や一部香港メディアが、習近平政権は同年秋の共産党全国代表大会(党大会)の後に、憲法改正を行うとの見方を発表していた。
 
12月27日時点で憲法改正案は明らかにされていないが、中華人民共和国主席と副主席についての「2期を超えて連続して就任することはできない」(79条3)の条文を改正して、習近平国家主席の三選への道を整える可能性も指摘されている。
 
中国では1989年に発足した江沢民政権時に、共産党総書記が国家主席と中央軍事員会主席を兼任することが定例になった。5年に1度の党大会で選出された共産党総書記は、翌年春の全国人民代表大会(全人代)で国家主席に選ばれ、総書記就任から10年後の党大会で党総書記の地位を後任に譲り、翌年春の全人代で国家主席の地位を譲るというパターンだ。
 
共産党上層部は、党大会時に68歳になっていれば引退するとの習慣が定着しているが、規則として明文化はされていない。憲法では国家主席の年齢が45歳以上と定められているが、上限については定めがない。
 
習近平主席が3期目を目指そうとすれば、党上層部の「定年についての合意」と憲法の条文のいずれをも修正せねばならい。抵抗も大きいと考えられる。かなり高いハードルになることは間違いない。
 
▼ 「習近平思想」を盛り込んで、一層の権威づけ目指す可能性
 
三選禁止の条文撤廃以上に現実味があるのは、憲法に「習近平思想」の言葉を盛り込むことだ。82憲法は当初、指導原理原理として「マルクス・レーニン主義」と「毛沢東思想」を挙げていたが、1999年の改正で「トウ小平理論」が、2004年の改正では「3つの代表の重要思想」が追加された。
 
習氏は2017年10月の党大会で党規約に「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」との文言を盛り込むこと成功した。それまで党規約には指導原理として「マルクス・レーニン主義」「毛沢東思想」「トウ小平理論」「3つの代表の重要思想」「科学的発展観」が挙げられていた。
 
「マルクス・レーニン主義」は共産党の基本的イデオロギー、「毛沢東思想」は日本を含む諸外国に生存権を脅かされていた過去の中国からの脱却――中華人民共和国を設立――させた思想、「トウ小平理論」は教条的な極左思想から脱却し、改革開放で経済建設を目指す理論だ。
 
「3つの代表の重要思想」は江沢民元国家主席が提唱した思想で、それまで労働者や農民の利益を代表する階級政党だった共産党の性格を、企業家なども含めた国家全体に奉仕する政党に変更した。「科学的発展観」は胡錦濤前主席の提唱で、人を基本として経済・社会・政治・文化などが全面的に協調する持続可能な発展を目指す考えだ。経済成長偏重を反省し環境汚染・役人らの腐敗・格差など社会に噴出した諸問題への対応を重視し、安定成長を目指す路線と考えよい。
 
しかし「トウ小平理論」が党規約に盛り込まれたのは1997年、憲法に盛り込まれたのは99年で、いずれも97年2月にトウ小平が死去した後だった。「3つの代表の重要思想」が党規約に盛り込まれたのは、江沢民氏が党書記を退任した2002年の党大会で、憲法には04年に盛り込まれたが、いずれも「江沢民」の個人名は記載されなかった。「科学的発展観」は現在も憲法に盛り込まれていない。
 
習近平氏が党規約に続いて憲法にも「習近平思想」を盛り込めば、個人の権威をあらためて強くアピールすることになる。
 
▼ 背伸びしてでも「握った手綱」を引き締めつづける習近平政権
 
中国共産党は改革開放の開始以来、政治的には絶対に異議を認めないものの、部分的には人々や企業の自由度を向上させ、「個人のやる気」を引き出すことで経済を活性化してきた。国家と人民の支配という「手綱は握りしめているが、やや緩めた」状態だったといってよい。
 
しかし習近平政権は、統制の度合いを高め続けてきた。それまでの政権とは異なり、「手綱そのものを引き締める」方針に転換したと言ってよい。1月の中全会で党としての憲法改定の合意が得られたとしても、「規制緩和」の方向になるとは思えない状況だ。
 
現行憲法では、序文部分に「中国共産党の指導」などの表現が複数個所あるが、改定後の憲法ではさらに強調される可能性もある。「最高の国家権力機関」と位置付けられている全国人民代表大会の説明に、「共産党の指導」がなんらかの形で追加される場合もありうる。
 
なお、憲法にも盛り込む可能性が出てきた「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」だが、その内容に新鮮味は乏し
い。新たな表現として目を引くのは経済・政治・文化・社会・エコ文明を全面的に建設する「五位一体」や胡錦濤前主席が唱えた道(政治路線)・理論・制度の「3つの自信」に文化の自信を加えた「4つの自信」などだ。また、「中華民族の偉大なる復興」も抽象的。「人民全体が共に裕福になる」も、一見するとトウ小平の「先富論」からの脱却を宣言したようだが、胡錦濤政権時にはかなり本格的な取り組みが始まっていた。
 
国内における「目立つ実績」と言えば腐敗撲滅がある程度にも見える。外交面ではアジアインフラ投資銀行(AIIB)設立といった派手な動きはあったが、開業後1年の17年1月16日までに決定した融資総額は17億3000万ドルと、日本主導のアジア開発銀行の10分の1以下だった。習近平氏が力を入れている「一帯一路」も実績を出せていないし、今後を危ぶむ声も強い。
 
2012年から17年までの習近平第1期政権に「合格点」を出せるかどうかは別にして、毛沢東並みの権威獲得に動いていることは、どう見ても「背伸び」だ。あるいは無理を承知の上で、「そうでもしないと、共産党政権は危機的状態に陥る」との使命感あるいは恐怖感にもとづく、主観的にはやむを得ない選択なのかもしれない。
 
1月の中全会で憲法改定が決まれば、3月の全国人民代表大会で可決されることになる。(編集担当:如月隼人)

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