もしかしたら「ワクワク・アイランド」と呼ばれていたかも

読書は好きです。本だけでない。雑誌や新聞もある。とにかく活字中毒。おっと、最近はインターネットというものもあるから、文字中毒というべきかもしれない。とにかく、文字を目で追っていることが大好きです。


本を買う時、よく利用するのが近所の古本屋。「3冊500円」なんてワゴンを利用する。この価格だと、かなり気楽に購入できる。問題は、自分の部屋に、際限なく本がたまっていくこと。私は基本的に本を廃棄することがないので、とにかくたまっていく。


古本屋の魅力は、何と言っても価格。もちろん、絶版になってしまった本に高い値段がついて売られている場合もある。それはそれでよし。そういう本も、ごくたまにではありますけど、買うことがある。


新刊本ですけど、単行本の場合、1000円前後から2000円、3000円することって、普通にありますよね。それをもって「本って高い」という人がいる。私は決して、そうは思いません。もちろん、安ければ安いにこしたことはないけど、自分自身が内容に納得がいく場合、数千円しても、決して高いとは思わない。


ほんのちょっと贅沢な食事、あるいは普通の飲み会でも、3000円とか4000円とかの出費は、そう珍しくない。だから、新刊の単行本の価格は、決して高いとは思わない。もっとも、内容が期待外れだった場合には腹が立ちます。でもこれだって、飲食店でもハズレはありますからね。


ええと、例によって話がそれた。何を言いたかったかというと、私の本の読み方です。内容をすみからすみまで熟読することもありますが、そうでないものも多い。ざあっと読んでいく。1冊の中で、1つでも2つでも「ふむむむ」てな内容があれば、読んでよかったと思う。


典型的な例のひとつが「地図の歴史――世界篇」(講談社現代新書/織田武雄著)でした。これも3冊500円で購入したうちの1冊。「地図の起源」に始まって、「ギリシア・ローマ時代の地図」、「中世における地図学の退歩」、「近代地図のはじまり」と進んでいきます。


私が「おおお」と思ったのは、イスラム世界が生み出した、12世紀のアル・イドリーシーの世界図についての記述。


まず、アジア東南の部分に「sin(シン)の国」があるそうです。これは「シナ」つまり中国。近くに「sila(シラ)」という島がある。これは、「新羅」ではないか。日本では「新羅」を「しらぎ」と読みますが、これはむしろ「日本風」の読み方だそうですね。現代の北京語での「新羅」の読み方は「シンルオ」に近い。韓国/朝鮮語だと「シルラ」。


「シナ」の近くにある「シラ」の国なら「新羅」だろう。半島ではなく、「諸島」との記述ですが、この程度の誤認識は、当時の世界地図としてそう珍しくはない。


さらに、です。当時は知られていなかった南北米大陸をすっとばして、対岸のアフリカに「ワクワク」という国がある。「ワクワク」という国は、アル・イドリーシーの世界図よりも、もう少し古い文献にもあって、「シン(シナ)から先はよく分からないが、…金を産するシラと、やはり金を産するワクワクがある」と紹介されているそうです。


「ワクワク」とは、とりもなおさず日本のこと。日本をなぜ「ワクワク」と呼んだかといえば、「倭国」に由来すると推定できるそうです。


このアル・イドリーシーの世界図なんかがヨーロッパに知られるようになる前に、いわゆる「マルコ・ポーロの東方見聞録」なんかが有名になった。その中にある「ジパング」が、たとえば英語のJapanの語源になったということは、よく知られていますね。


ちなみに、「ジパングとは、『日本』の中国語読みによる」という説明がありますが、私はちょっとだけ違うと思う。現在の中国語標準語では日本を「riben(リーベン)」と発音します。「ri」の音を「ズー」と発音する地方も多い。だから、「ジパング」の「ジ」の部分が、日本の「日」の中国語読みに由来するということは、そうだと思う。


問題は、“東方見聞録”における「ジパング」のつづりが「Zipangu」となっていることです。「日本」だけでは「gu」の部分が説明できない。それに中国語では、「‐n」の発音と「‐ng」の発音を、わりと厳密に区別する。


だから、「ジパング」とはおそらく、「日本国」の「ribenguo(リーベングオ)」に由来するものでしょう。「リーベングオ」→「ズベングオ」→「ジパング」なら、納得がいく。このあたり、専門家の先生に、しっかりと教えていただきたいところです。


ええと。また話がそれちまった。“東方見聞録”に記載がある「ジパング」という名よりも早く、イスラム世界ではある程度知られていたらしい「ワクワク」なんて国名がヨーロッパで広まっていたら、今でも英語で日本のことを「ワクワク」なんて言っていたかもしれない。おもしろいなあ。本当に「ワクワク」してしまう。


まあ、私はこんな風に、本を読んでいます。1カ所だけでも「これは面白い」と思えれば納得してしまう、脳天気な読書人(?)です。