進化しつづける日本語…へるしでおいしい・優ゎた品質・値すろ・おさけさい

最近、入手したカボチャの種。とにかくナッツ類が好きでしてね。目がない。ということで開封前からわくわくなのですが、よく見るとちょいとおかしい。
まず、商品名。「赛味馆」。なんだこりゃ。意味がよく分からない。というか中国大陸の簡体字だ。
 
さらに日本語を見る。「へるしでおいしい」。むむむ。その他、「優ゎた品質は即ちじっくり賞味に値すろ」、「特色の香りで人氣いつぱい」……。ありゃあ、繁体字(旧字体)も混じっている。さらに、「直射日光をおさけさい」なんて表示もある。製造元所在地を見てみると、「北京市順義区」。ふうむ、なるほど。日本語は着実に進化しつつある。
 
まあ、悪口を言っても仕方ない。在日している中国人に聞くと、日本で見られる中国語の表示も、腰が抜けるほど、カッ飛んでいる場合があるそうですからね。
そこでひとつ、このカボチャの種の包装にある表示から、日本語をよく知らない中国人が書く日本語の特徴を考えてみましょう。
 
1 小さなかな文字の意味を無視する。表記規則でなくデザイン上の問題と思っているのかもしれない。
「新しいぁいであ」なんて部分がある。ひらがなとカタカナの使い分けは別にして、大きな文字と小さな文字の使い分けがおかしい。
どんな言語にも表記上の規則があります。その規則の基本を知らなければ、奇妙奇天烈な書き方が出現してしまう。前にインド製品の包装に「パ|ツ」「スペ|ス」なんて書いていた。カタカナで使う音引きの記号を、縦書きにする場合には縦にして、横書きにする場合には「―」とすることを、ご存じなかったのだろうなあ。
2 形の似ているかな文字は、混同しやすい。
この包装では「優れた」が「優ゎた」になっています。文字の大きさだけでなく「れ」と「わ」を混同している。それ以外にも「値すろ」なんてある。これは「値する」でしょうね。過去に見た例では「シ」と「ツ」、「ン」と「ソ」なんかも混同している例がありました。もっともこれは、日本人でも区別がつきにくい字を書く人がいますが。日本人なら、まずやらかさない混同としては「レ」と「し」なんかがあります。
余談ですが、中国のネットでは「工場」の「工」と、「人口」の「口」をつかって「工口(えろ)」と表記する場合がある。例えば、日本成人遊戯(日本の成人向けゲーム)の紹介文です。取り締まりの対象にならない限度内で、盛んに紹介されています。
3 日本語では漢字に「繁体字」を使うと認識している。ただし、適当に簡体字も使う。
ご存じのように、中国大陸では漢字を大胆に省略した簡体字(シンガポールも)、それ以外の台湾、香港、マカオなどの中華社会では旧字体の「繁体字」を使っています。日本の漢字(新字体)は両者の中間で、やや繁体字寄りと言ってよいかな。中国人は日本語の漢字を見て、「あ、これは繁体字だな」と思うのかもしれない。
だから、「人氣」なんて書いている。ちなみに、「氣」の簡体字は「气」です。
ただ、この包装を見る限り、簡体字も混じっている。「直射」、「开封」などです。もしかしたら、「直」や「开」が簡体字と知らない人のしわざかもしれない。
4 文字を適当に省略する
どちらかと言えば、かな文字を省略している場合が多いですね。中国で、「旅の楽」と書かれたバックパックを見たことがあります。おそらく「旅の楽しみ」でしょう。なんで、「しみ」を略したのか。まず、中国では日本語の「の」が中国語の「的」に相当することはよく知られている。中国語で「旅」は「旅游」ですが「旅」だけでも十分に通じる。
中国語では、単語の語義の誤解を避けようとして、2文字の単語にする場合が多いのですが、実際には1文字でも十分に通じる場合の多いということがミソです。特に口語ではなく文字にした場合がそうです。旅の発音は「リュー(lv3)」で、これだけなら同音語がやたらありますが、「旅」と書けば確実に分かる。
「楽」も文字にすれば「楽しい」を意味すると分かる。「楽しみ」の「しみ」の部分は、日本語を知らない中国人にとって、意味をなさないので、バッサリと除去したというわけでしょう。
ただ、このカボチャの種の包装ですが、妙な省略と言えば、「直射日光をおさけさい」、「高温・多湿の场所(場所)はおさけさい」ぐらいかなあ。次の注意書きに「お早めにお召し上がり下さい」と書いているので、「下」の文字を省略したとすぐ分かりましが、なんで省略してしまったかは不明。
あれやこれや考えているうちに、「日本語をきちんと書こうと思ったら、
基礎中の基礎の部分でも、そうとうにしっかりと教育されることが必要なのだなあ」と思った次第です。(編集担当:如月隼人)