「兄貴」の出獄に豪華車100台繰り出し出迎え=警察介入、反社会勢力85人の身柄拘束―天津市

 
天津市警察は27日、刑務所を出所する「兄貴」を、「弟分」が豪華車約100台を連ねて出迎え、その後にホテルで催した「パーティー」でも大騒ぎしたことが、社会に「悪辣な影響」を与えたとして、違法行為摘発のため大規模な捜査を行い、反社会勢力85人の身柄を摘発した事例を紹介した。警察は同事例を「掃黒除悪(反社会勢力を一層、悪を除去)」キャンペーンの典型事例とした。
事件発生は2017年暮れだったという。刑期満了が近づいた受刑者の劉は、「弟分」に釈放の常用を伝え、組織関係者に出迎えと、「出獄パーティー」の開催を言いつけた。
劉の出獄時には「弟分」らが豪華車約100台で刑務所前に乗りつけたため、周囲の交通が混乱した。一同はその後、「出獄パーティー」の海上のホテルに出向いた。パーティー会場は「酒杯のやりとり」などで大騒ぎになった。周囲には大迷惑で、従業員も他の客も「怒りを感じたが、苦情を言う勇気はなかった」という。
警察は「社会に悪辣な影響」を与えたとして、「出迎え」を行った関係者に違法行為がないか捜査を開始。320人から事情を聴取し、証拠600点余りを収集して犯罪容疑者85人の身柄を拘束した。押収物の中にはショットガンや銃弾もあったという。
天津市警察は「正義が不在であることはない。反社会勢力がいかに大きくとも、法の最低ラインに抵触すれば、結局は法の網におちいる」と強調し、「掃黒除悪」キャンペーンは、政治により庶民にとって清く伸びやかな環境をもたらすものだとアピールした。
 
写真は2016年に山西省普城市で撮影。天津市のケースと同様に、出獄する「兄貴」を大勢の「弟分」が出迎えた。この時にも現地警察が動き、多くの者を検挙したという。中国では同様の事態がしばしば発生している。
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◆解説◆
天津市警察の発表で興味深いことは、1年以上も前の案件を今になって大きく紹介したことだ。中央から「『掃黒除悪』に力を入れよ」との指示があり、「精勤ぶり」をアピールした可能性がある。
習近平政権は発足以来、腐敗撲滅に力を入れた。大きな目的は二つあったと言ってよい。まずは、庶民に対するアピールだ。前胡錦濤政権は、開明的な理念を持ってはいたが、権力バランスの問題と、おそらくは胡錦濤前主席の性格上の理由もあり、強大な指導力を発揮することはなかった。
習近平主席は、共産党中央が強い指導力を示せなかったことが、国民の共産党に対する信頼感が低下したと強い危機感を持ったと考えてよい。腐敗撲滅キャンペーンの強力な推進が多くの国民に歓迎されたことは間違いない。
腐敗撲滅は一方で、政権内の「抵抗分子」を排除するためにも奏功した。ただし、習主席に近い立場と見られていた人物が腐敗撲滅により失脚した事例もあることから、同キャンペーンが単純に「政敵排除」のために進められたと見るのは不公平だろう。ただいずれにせよ、党紀粛正により権力基盤が強化されたのは間違いないようだ。
この腐敗撲滅キャンペーンの今後だが、これまでのように強力に推進できるかどうかには疑問が残る。まずは、徹底したキャンペーンをこれ以上長期間に渡り推進すれば、党内の反発が高まる恐れがあることだ。これでは、権力基盤の強化という目的には逆行してしまう。もう一つは、人材の問題だ。習近平政権下では、王岐山氏が2017年まで中央紀律検査委員会書記(トップ)として辣腕を振るった。後任の趙楽際書記が王岐山氏ほどの成果を出せるかどうか疑問とされた。実際に、就任から1年半が経過した現在も、王岐山書記時代ほどの動きは伝えられていない。
現在の中国共産党中央で、王岐山氏ほど辣腕を振るえると思われる人材はなかなか見当たらない。仮に、王岐山氏を何らかの形で事実上の復帰をさせるとしても、年齢面からくる健康問題はつきまとうろう。
腐敗撲滅キャンペーンを従来のように強力に推進できないとすれば、庶民の支持を取り付けるために別の方策が必要となるだろう。その一つとして考えられるのが「掃黒除悪」だ。反社会勢力、あるいは犯罪集団の摘発に実績を上げれば、多くの庶民が納得することは間違いない。
中国の政権、最近ならば習近平政権はとりわけ、「強権発動の独裁的性格が強い」と見られている。確かに事実ではあるが、中国の政権が庶民の評価を相当に気にしていることも考え合わせねばならない。現在の中国では、国民の政権に対する不満が相当に高まったとして、それが直接に体制崩壊に結びつくような動きにつながるとは考えにくいが、共産党上層部の深刻な対立の引き金になる可能性は常にある。党上層部で政権に対立する立場のグループが、「国民の不満」を理由に何らかの動きをすることが容易になるからだ。そのような事態を防止するためにも「国民の満足度」を高める施策は不可欠だ。
そのため習近平政権は、国民に対する統制を強化すると同時に、国民に恩恵を与える政策に力を入れている。例えば経済分野では、「品質のより高い消費生活」を求める国民の声に応える政策を打ち出している。(編集担当:如月隼人)


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Posted by 如月隼人