東アジア今日は何の日:6月11日~中華民国(台湾)が尖閣諸島の領有権を正式に主張=中国に半年先行

1971年6月11日、中華民国(以下、台湾)が初めて、尖閣諸島の領有権を正式に主張した。中国(中華人民共和国)が領有権を主張するのは約半年後の同年12月30日だった。尖閣諸島問題は結果として、日中関係に対して台湾が仕掛けた「地雷」となった。
 
第二次世界大戦での日本の敗戦にともない、1946年1月には尖閣諸島を含む南西諸島の施政権が日本から連合国に移管された。1952年のサンフランシスコ平和条約で日本が改めて独立してからは、南西諸島の施政権は米国に移管された。琉球列島米国民政府は、施政権の及ぶ範囲を北緯・東経で指定したが、尖閣諸島も範囲内だった。
 
台湾は1950年代には、尖閣諸島への“進出”を開始していた。1955年には中華民国旗を掲げた船2隻が魚釣島近海で日本漁船に救助を求め、近づいた日本漁船を銃撃する事件も発生した(第三清徳丸襲撃事件、2人死亡・4人行方不明)。
 
台湾漁民の尖閣諸島「進入」は続いた。多くの台湾漁民が尖閣諸島に上陸し、乱獲による生態系の破壊も問題になった。しかし当時の日本政府は南西諸島の施政権を持っておらず、米国政府を通して抗議した。しかし当時の米国政府は中国と厳しく対立していた関係で台湾との関係を重視しており、抗議はしても尖閣問題について事実上は「目をつぶる」状態だった。
 
同時期の台湾政府は、1965年10月に中華民国国防研究院が出版した地図や70年1月に出版した国定教科書で尖閣諸島を日本領として扱うなど、正式には尖閣諸島の領有権を主張していなかった。しかし一方で、尖閣諸島に上陸して中華民国国旗を掲げるなどの動きもあり、琉球政府は中華民国国旗の撤去などを行っている。
 
1971年1月29日には米国サンフランシスコで、中国人留学生らが尖閣諸島は中国固有の領土であると主張するデモを行った。デモは、ロサンゼルス、ニューヨーク、ワシントンなどにも広がった。この場合の「中国人」は多くが国民党系中国人だった。
 
台湾(国民党)で尖閣諸島領有権の主張が強まった背景の一つに、1968年に尖閣諸島近海に海底油田が存在する可能性が指摘されたことがある。また、沖縄の日本への返還が具体的に進みはじめたことがある。尖閣諸島が「沖縄の一部」として米国に日本に返還される前に自国領と主張しておかねば、その後になって主張しても効力は全くないと考えねばならないからだ。
 
台湾は1971年6月11日に、尖閣諸島の領有権を初めて公式に主張。直後の同月17日に、日米間で沖縄返還協定が締結された。
 
中国は同時点まで、尖閣諸島の領有権問題には触れていなかった。逆に、中国共産党機関紙の人民日報が1953年1月8日に掲載した「琉球群島人民の米国による占領に反対する闘争」は尖閣諸島について琉球群島(沖縄)を構成する一部と紹介している。
 
尖閣諸島に対する中国の動きは、台湾の「後追い」だったと理解できる。日中国交正常化交渉のために訪中した田中角栄首相と会談した周恩来首相は尖閣諸島の問題について、「石油が出るから、これが問題になった」との発言に続けて、「石油が出なければ、台湾も米国も問題にしない」との見方を示した。
 
同発言は一般に、尖閣諸島の問題の背景に石油資源があることを示すと理解されている。しかし、周恩来首相の言葉をさらに分析すると「台湾や米国が問題にした」から「中国も問題にせざるをえない」と読める。しかし、米国は同問題について「主権の問題は当事者が解決すべき」といった表明を繰り返し、直接関与する意向はないことを明らかにしていた。周恩来首相も、このことを熟知していたはずだ。
 
つまり、周恩来首相の発言からは「台湾が問題にしたから中国も問題にせざるをえない」との真意を抽出することができる。
 
中国政府は、「反植民地状態にされ、侵略を受けた中国に、真の自主独立をもたらしたのは中国共産党だった」との主張を、自らの正統性の大きな根拠としている。台湾が尖閣諸島を「中国領」と主張した場合、中国が仮に座視すれば、「日本に侵略された中国領を見捨てる」ことになってしまう。つまり、自らが依って立つ正統性の根拠が崩れてしまう。
 
中国(中華人民共和国)が領有権を主張するのは、台湾による主張から約半年遅れた1971年12月30日だった。年末ぎりぎりになっての発表からは、「翌年以降になって主張したのではまずい。『ほぼ同じタイミング』というイメージにするためには、同年中に発表する必要がある」との計算も見えかくれする。
 
1972年に日本が台湾と断交して中国と国交を樹立したことで、尖閣諸島の問題はむしろ日中間の対立事項となった。その意味で、尖閣諸島問題は台湾が日中の接近に対して仕掛けた「地雷」となった。(編集担当:如月隼人)

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