WHOは新型肺炎の状況発表で中国に妙な“忖度”?

中国政府やWHOはこのところ毎日、湖北省武漢市で発生し中国全土に拡大した新型コロナウイルス感染の感染症の状況を発表している。両者の数字は中国政府発表の感染確認の累計数が多いなど完全に一致していない。中国政府は毎日の北京時間0時までのまとめとして発表しており、数字の違いは日付変更などに関係していると理解してよいだろう。

 

ところで、それ以上に気になることがある。中国政府は毎日の発表で、まず「31の省(自治区、直轄市)と新疆生産建設兵団からの報告」のまとめとして数字を紹介している。

 

中国では民族自治区と中央直轄市は「省」と同格の行政区画とされている。また、新疆生産建設兵団はいわゆる「屯田兵」の組織で、通常の行政区画とは別の扱いだ。「省」と新疆生産建設兵団を合わせれば、中国当局が「直接に実効支配」している地域、いわゆる「中国本土」ということになる。統計の作成などで、「中国本土」を対象にすることはこれまでの通例とも合致する。

 

中国政府は同じ発表に「香港特別行政区」と「マカオ特別行政区」「台湾地区」の状況を追記している。中国当局は「台湾地区」を「中国の一部」と主張している。その主張の是非は別として、中国本土とは異なる社会の仕組みを認めている香港とマカオ、さらに実効支配が及んだことのない「台湾」を別記することは、政治的な主張は別として「実態を考慮した書き方」と言ってよいだろう。

 

不思議なのはWHOの発表だ。世界各国の感染確認の一覧表では「CHINA」として記入し、欄外に「香港特別行政区(13例を確認)、マカオ特別行政区(7人を確認)、Taipei(10人を確認)を含む」と書いている。

 

香港とマカオについては、中華人民共和国の一部としての特別行政区という地位が確定しているのでまだよいとしても、中華人民共和国当局に実効支配されたことが一度もなく、社会の仕組みも異なる台湾を中国の一部として表中の数字に加えるのは不自然ではないだろうか。しかも、欄外の注記も「Taiwan」ではなく「Taipei」だ。これでは「台北市内についての数字」と誤読されかねない。

 

WHOは中国での感染確認の数を省ごとに多い順に記載する表も発表した。香港、マカオ、“Taipei”はやはり、中国の省として扱われている。

 

WHOの発表は、中国当局以上に「一つの中国」を念頭に置いているようにも思えてしまう。中国に妙な“忖度”でもしているのかと、勘繰りたくなる。

 

写真はWHOが発表した中国における新型肺炎の省別の感染確認者数を示す表の一部。左の部分には「Jilin(吉林)」「Hong Kong SAR(香港特別行政区)」「Taipei(台北)」「Qinghai(青海)」「Macau SAR(マカオ特別行政区)」「Xizang(チベット)」「Total(合計)」と書かれている。