黄砂の思い出~世界が黄色になっていた

気象庁によると、20日午後9時現在、北海道南部や青森、秋田、岩手なんかに黄砂が飛来しているみたいです。震災で大変なことになっている上に、鬱陶しいだろうなあと、現地の人に同情してしまいます。


私が中国に留学していた時に、大規模な黄砂に遭遇した話をご紹介しましょう。


その時は、これまでも何度かご紹介した北京語言学院――今は、北京語言大学という名になったのかな――で学んでいました。寝起きしていたのは大学構内の寮です。なぜか朝早く目が覚め、窓のカーテンを開けて驚いた。「世界が黄色」になっている。空が黄色い。少し遠くの立木も黄色くかすんでいる。黄色く薄暗い光が世に満ちている。


中国北部では、猛烈な黄砂が発生することは知っていましたから「ハハン」と思いました。中国の人も、黄砂の時には外出を嫌がる。体全体、特に頭の毛穴なんかに細かい砂が入りこんでしまって、実に不快になる。女性なんかは外出時に、髪の毛の中に細かい砂が入って来るのを少しでも防ごうとして、ネッカチーフで頭部をすっぽり覆ったりします。


でも、私にとっては初体験。とにかく、「世界が黄色くなる」なんてことは、日本では体験できない。すぐに散歩に出ました。ただ黄色いんじゃなくて、太陽光線も届かないんだから、明るさからいえば、相当に厚い雲に覆われたような感じでした。まるで、別の惑星の上。


部屋に戻ってから、とにかく暗いので照明をつけた。ここで2度目のびっくり。蛍光灯が真っ青な色になって光っているんです。真っ青というより、ちょっと紫っぽかったかな。蛍光灯がイカれたかなと思ってよく見るが、異常ではない。外出していた時に目が「黄色の世界」に慣らされてしまって、普通の蛍光灯を見た時に、青色に見えたというわけです。5分か10分たつうちに、普通の蛍光灯の色に見えるようになりました。黄砂は室内にも入りこみ、机の上をなでると、指先にうっすらと黄色い土埃がつきました。


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黄砂飛来というと、「中国から迷惑なモンが飛んでくる」と怒る人が多い。ただ、前にモンゴル族(国籍は中国)の研究者に聞いたのですが、責任は中国だけにあるのではないとのことでした。


彼の専門は「リモートセンシング」。要するに衛星が写した写真を解析して、地表面の分析をする研究です。黄砂が発生する原因は乾燥して植生がない土地を強風が吹くことですが、中国で黄砂を発生させる土地が増大しているのは、地球全体の温暖化の影響が大きいとの説でした。


彼は、中国でこれまで森林の伐採や、草原などにおける無謀な農業化計画の失敗が、乾燥地帯の砂漠化をもたらした一因と認めた上で、「シベリアでは大森林が減少している。その影響で中国内陸部の降水量が減少した。一連の変化は、地球温暖化の結果のひとつと考えられる」と指摘しました。中国政府も内陸部の砂漠化で、農業生産などに大損害が出ているので、森林の保護や植樹に力を入れていますが、彼によると「特定地域だけの“対症療法”で、砂漠化を食い止めるのは、無理がある」とのことでした。


まあ、だからといって「黄砂について中国は免責」というわけにはなりませんよね。


地球温暖化が「大原因」だとするなら、温暖化ガス排出削減にかんする国際会議ではもっと協調的になってほしい。国益にもとづく主張をするのは分からないこともないのですが、もう少し「このままでは自国も、もっとひどい目に会う」と危機感をもってもらいたいと思います。