冬虫夏草、キロ当たり300万円超 価格高騰の背景には「大ペテン」があった=中国


 中国メディアの新浪網は12日、「起底冬虫夏草:一箇“中国式”大騙局的始終(舞い上がった冬虫夏草、ひとつの『中国式』大ペテンの始終)」題する文章を掲載した。同文章は、冬虫夏草の価格高騰の背景には、陸上競技の組織的ドーピングをごまかすために名を挙げられたことがあったと指摘した。

 冬虫夏草の最も早い記録は、1758年に著された「本草従新」にあるという。しかし文章は、中国の古い医学書には、それこそ「ありとあらゆるもの」について薬効が紹介されており、冬虫夏草もさほど珍しい薬材ではないと指摘。

 冬虫夏草の科学的研究については、1950年代にドイツで始まったと紹介。冬虫夏草は蛾の幼虫にキノコが寄生したものだが、当初は死んだ蛾の幼虫が腐敗しないことに、興味がもたれたという。

 薬材としての冬虫夏草については、1970年代までは、特に注目された存在ではなかったと紹介。1960年代の生産地における価格は1キロ当たり0.6元で、たばこ2箱分に相当する程度だったという。70年代には国家による買い取り価格が1キロ当たり23元になった。

 80年代になると、冬虫夏草の価格が上昇しはじめた。83年には1キロ当たり300元前後。同時期の長白山(吉利省)産の朝鮮人参の価格は60-80元で一般的労働者の月給と同程度の価格だった。1990年ごろには冬虫夏草の価格がキロ当たり1000元、朝鮮人参は価格が下落してキロ当たり50元程度になった。

 文章は、冬虫夏草の「評価」を一気に高めたのは、陸上競技の馬家軍コーチだったと指摘。馬コーチの指導する選手が、大きな競技大会で次々に優秀な成績を上げ続け、世界は驚いた。「馬軍団」という言い方すら現れた。

 「馬軍団」はドーピングの疑いが持たれるようになった。馬コーチは選手に「伝統薬」を使わせていると説明。具体的には冬虫夏草の名を挙げた。冬虫夏草の価格は1990年半ばにはキロ当たり2000元に高騰した。

 後になり、馬コーチのドーピング行為が明らかになっても、冬虫夏草の価格は高騰しつづけた。2007年にはキロ当たり20万元の価格がついた。主要な産地である青海省では金目当てのための乱獲がたたり、生産量が減少した。そのことが、価格高騰に拍車をかけたという。

 しかし2015年になると、冬虫夏草の価格が下落しはじめた。中国中薬協会によると、青海省産の冬虫夏草の価格は、15年4月には21万8000元だったが、最近では18万6000元だ。チベットにおける市場価格は15年4月の21万元から、最近には16万元に下落した。

 しかし現在でも冬虫夏草を使った極めて高価な商品が販売されている。「冬虫夏草100%」を謳うある錠剤は、0.35グラムの錠剤45粒で、1万6900元で販売されている。キロ当たりでは107万3016元(=約1800万円)だ。

 文章は冬虫夏草について、食品であるのか薬品であるのは、保健食品であるのか、行政上の扱いも混乱したままと指摘。薬品として扱うには、人を対象にした臨床実験が必要だが、冬虫夏草の効果を示したレベルの高い論文が存在しないことは、業界内での「共通認識」だという。

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◆解説◆
 中国では1990年代から、腐敗絡みの「高級品の贈答」が横行した。その場合、「高価な物ほど買い手がつきやすい」という現象も発生した。冬虫夏草の価格高騰と、2015年以降の下落は、腐敗を巡る社会情勢の変化とも一致している。2013年に本格始動した習近平政権が腐敗撲滅に厳しい姿勢で臨むようになってから、高級酒などの価格も下落した。

 上記文章を発表したのは、北京市に本社を置く智趣的知識分子(北京)伝媒有限公司(略称:知識分子)という会社。同社は生物学者の饒毅氏、脳科学者の魯白氏、社会学者の謝宇氏が設立した。3氏とも専門分野で大きな実績を持つ研究者で、会社としては、ジャンルに限らず「価値ある科学の成果を商品化する」ことに取り組んでいる

 同社は、科学に関連する社会的問題を指摘する文章の発表も続けている。(編集担当:如月隼人)

参考:・起底冬虫夏草:一箇“中国式”大騙局的始終(中国語)