日中外相会談、実現するも記者会見はなし 「本音」は言えないデリケートさ浮き彫り

 

 中国を訪問した岸田文雄外相は4月30日午前、北京市内で中国の王毅外相と会談した。4時間以上に渡る長い対話を行ったが、終了後の記者会見はなかった。記者からの質問を受けた両外相が、「本音」を話したのでは都合が悪いとの判断があったと考えられる。

 

 外務省(日本)は公式サイトで、岸田・王両外相の会談の状況を紹介。日中関係の重要さの認識や関係改善の努力の必要性、相互の敬意や尊重の回復の重要性や経済協力や青少年交流の重要性の4点については一致したという。

 

 北朝鮮問題については、繰り返させる挑発行動に対して、双方とも懸念を表明。安保理決議の厳密な履行を含め、緊密に連携していくことで一致した。

 

 岸田外相は「隣国なので課題は尽きない」、「意見の異なる分野では率直に対話し、適切に処理していくべき」と表明。その上で東シナ海,南シナ海,国民感情の問題,歴史,台湾等について率直な意見交換を行ったという。

 

 外務省は会談全般について「互いに胸襟を開いた真摯な対話」と説明。両国関係の重視など「全体論」では一致したが、各論については意見の違いが大きかったと分かる表現だ。

外交分野で、複数国の要人が公式に会談した場合、終了後には記者会見が実施されることが多い。しかし岸田・王両外相の会談後に記者会見は行われなかった。

 

 記者会見が行われれば、日中双方が対立する個別の事例について、両外相への質問が集中することは当然だ。両外相が「本音」を語ったのでは対立面を浮き彫りにしてしまい、会談の成果が台無しになる。また中国にとっては、「日本の外相に、言いたい放題にさせた」として、国民の不満が政府や共産党に向けられる恐れがある。

 

 そのため、記者会見を開くことはできなかったと考えられる。中国・外交部が公式サイトに掲載した画像も、岸田外相は体全体を王外相に向けているが、王外相はカメラの方向を見ている(写真参照)。自国民に向けて「中国は日本に妥協しない」とのイメージを強調したと考えられる。

 

 岸田外相は同日、中国の李克強首相、楊潔篪国務委員とも会談した。李首相は「両国関係は改善の流れが出て来たが、その基礎は依然として脆弱」とした上で、両国関係の重要さを強調した。岸田外相も両国の協力が重要である考えを示した。

 

 楊国務委員も両国関係の現状について、李首相と同じ見解を示した。岸田外相は日本が中国側と協力して、両国関係を改善・発展させるべきだと述べた。

 

 国務委員は中国政府内で、副首相と同格とされる役職。それぞれが担当を持っている。現在は5人。楊国務委員は外相経験者で、担当は外交と対外情報管理とされる。中国政府で、日本の閣議に相当するのは「国務院常務会議」だが、一般の閣僚(部長)には同会議への出席資格がない。そのため国務委員以上が事実上の閣僚との考え方もある。(編集担当:如月隼人)

 

参考:・王毅就改善中日关系提出四点要求(中国語)

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