「中国市場? 13億でしょ。私は人口70億の世界を相手に勝負」・・・台湾No.1のパン職人の心意気

2016年5月5日

 フランスで4年に1度開催されるパン職人のワールドカップ「クープ・デュ・モンド・ド・ラ・ブーランジュリー」で2008年に優勝するなど、さまざまな国際的なコンクールで抜群の成績を収めた台湾のパン職人、呉宝春さんが、このほど台湾メディアの民報の取材に応じた。

 

台湾では近年、「中国絡みのビジネスこそ、経済面で台湾が発展する最良の策」との考え方が浸透した。しかし呉さんは「中国には13億の市場がありますよ。でも全世界の人口は70億以上です。私は中国だけを見ることはしません」と断言する。

 

 「クープ・デュ・モンド・ド・ラ・ブーランジュリー」で優勝したことなどで、呉さんには「中国市場進出」の誘いが何度もあった。中国資本からも台湾企業からも声をかけられた。しかし呉さんは首を縦には振らなかった。

 

 呉さんによると、心の中には「台湾の感情」、「国のために栄光を」という要素がいつもある。呉さんは1970年の生まれだ。物心ついてから成人になるまで、「国民党支配の中華民国に対する心からの忠誠」を厳しく求められる社会だった。呉さんは笑いながら、故郷を想う自分の気持ちを「洗脳教育によるものでしょう」と語る。

 

 台湾には、戦前から台湾に住み続けてきた人とその子孫の「本省人」と、戦後になり国民党とともに大陸から渡って来た「外省人」がいる。両者の反発もあった。しかし呉さんは「私の心の中には『本省人』も『外省人』もありませんね。みんな一家なんですよ。この(台湾という)土地のために頑張らねばならないのです」と断言する。

 

 呉さんの家は、とても貧しかった。そして2番目の姉は、大陸から来た退役軍人と結婚した。しかし、その義理の兄は、呉さんの一家にとてもよくしてくれた。呉さんは義理の兄に対して親しみを感じている。そんなことが、本省人である呉さんが外省人にわだかまりを持たなくなった背景にある。

 

 「クープ・デュ・モンド・ド・ラ・ブーランジュリー」で優勝して以来、呉さんはまず出身地に近い高雄で、次に台北で、さらに今年(2016年)には台中で店を開く予定だ。そしてそれとは別に、これまで中国だけでなく、香港やシンガポール、米国で店を持たないかとの話があった。

 

 応じなかった理由には、海外で店を持つ場合「呉宝春の店」というだけでは、済まないと思ったからだ。自分が海外出店する場合、どうしても「台湾」を背負うことになる。だったら、台湾の農産物を使ったパンで勝負したい。どうしよう。ということで、慎重に考え続けてきたという。

 

 いずれにしろ、呉さんの台湾における仕事は順調だ。「正直なところ、今の私は食べるのに困っていません。使えるお金だってある。生活のために悩む必要はない。そうなってみると、『人生は、お金さえあればよいというものではない』と、ことさらに思えて来ました」という。

 

 呉さんは、海外進出について、心の底から愛する「祖国・台湾」にどう貢献できるかを、考え続けている。(編集担当:如月隼人)

 

参考:・吳寶春:不把中國巿場看成全世界 只想把全世界帶來台灣(中国語)

 

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Posted by 如月隼人