台湾・馬英九総統、「自分と鹿が合体した動画」を罰を受けますとしてフェイスブックで公開

 台湾の馬英九総統が18日、フェイズブックで自らのアカウントに、これまでコメントを寄せてくれたネット民に感謝し、総統退任後も台湾のことを考えていくと表明する動画を投稿した。「間違ったことを言った罰」として、動画上の自分の頭の上に「鹿の角」を生やす場面もある。

 

 馬英九政権は、2008年の総統就任直後を除き、支持率の低さが目立った政権だった。特に若い世代の不支持は深刻だった。任期満了を目前にネット民、つまり「若い世代」に対して、率直でユーモア感のある人柄をアピールしたかったようだ。

 

 冒頭では、馬総統自身がカメラのセッティングを調整するように手が大写しになり、次いで馬総統がカメラ正面に着席する。そして、2011年1月にフェイスブックを始めてから現在までに、167万の「いいね」を寄せられたとして、ネット民に感謝した。

 

 続いて、寄せられた「自分自身にとって名誉とは言えない」と思われるコメントを紹介。最初は、「馬英九総統と握手した人が亡くなったり不幸に陥ることが多い」との噂に関連するコメントに触れた。馬総統は、「おお。私の手は、そんなにすごいのか」、「それなら、しっかりケアしないとね」と言い、ハンドクリームを取り出して、手にすりこんだ。

 

 次に、伝統薬として高く評価されてきた「鹿茸(ろくじょう)」について知識がなく「鹿の耳の中に生える毛」と発言した際に寄せられた批判のコメントを示した。そして「間違えたことを認めます。罰を受けようと思います」と発言。と同時に、映像上の馬総統の頭の上に、「鹿の角」のイラストを合成した。馬総統は「国語宿題ノート」と印刷されたノートを取り出した。背景に「先生の言いつけ。罰として3回写しなさい」との文字が写し出された。馬総統は正解として「鹿茸とは中国伝統薬にあって、まだ骨化して間もなく、毛も残っている幼い角のことです」などと、毛筆で書写した。

 

 その他にも、自分を批判したり皮肉ったりするコメントを紹介した後に「ただいま、ご紹介した、面白いご意見以外に、政府の施政に対して、建設的なご意見もたくさんいただきました」として、台湾人がビザなしで行ける国が増えたとのコメントや、対中関係で感じたことを書き込んでもらったり、2015年11月に中国の習近平国家主席と会談したことについては、非常に感動したとのコメントが寄せられたと説明した。

 

 そして最後の部分では、総統の任期が間もなく終了すると述べた上で「私は総統から退いても、台湾に対して関心を持つことを続けます」、「こころを1つにして、奮闘していきましょう。台湾をもっとよくしていきましょう」と語りかけた。

 

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◆解説◆
 上記動画は表面上は、他愛のない「おぢんギャグ」連発のようにも思えてしまうが、実は、馬英九総統が、「今後も政治シーンにとどまる」との決意を示した投稿と解釈することができる。そして、PRのプロが手掛けたに違いない、イメージアップのための各種の工夫がちりばめられている。

 

 まず、前半の自分に対する批判や皮肉を紹介した部分のバックには、たとえば無声映画時代のチャップリンの喜劇作品をCD化した際などによく用いられている、ピアノの軽快な演奏をかぶせている。「批判はきちんと受け止めました」とアピールしながら、「でも、こんなことはジョークの世界」とのイメージを演出する意図と理解できる。

 

 そして、批判コメントを終える際に、馬総統は思い入れたっぷりに「困ったものだ」と表情を見せ、、両手でじゃんけんの「チョキ」のようなしぐさをする。あたかも「こんな大局を見ない批判を切り離して考えれば」とアピールするようだ。そして、画面には「有趣(おもしろい)」の漢字と、発音表記が写し出される。改めての「こういうコメントはおもしろい。しかし……」という、意思表示だ。

 

 そして、音楽は突然に終わる。一呼吸して再び演奏されるのは、聴く人をしんみりと感動させ、勇気づけるようなメロディだ。馬総統の表情も、それまでのおどけた様子から一転。カメラに向けて、真剣に語る。

 

 馬総統が席から立ちあがり、自らカメラのスイッチを切る。画面は黒一色になるが、続けて白い文字で「8年間、中華民国総統を担当し、人民のために奉仕しました。私の一生の栄光です」との文字が写し出される。

 

 任期満了の総統の表明としておかしなところはないが、「人民のために奉仕(為人民服務)」が、中国共産党のキャッチフレーズであることも、気になるところだ。少なくとも、大陸人が見れば「共産党の言い方と同じ」とすぐに思うはずだ。馬総統の中国大陸に向けての「私とあなたがたは、気心が通じています」とのメッセージである可能性も否定できない。

 

 なお、同動画の前半で「罰として3回写す」の部分で、馬総統は毛筆を用いている。書かれた文字は、達者な楷書だ。この部分でも、馬総統は自らを敢えて「ピエロ」にしつつ、文化面での高いレベルを示して、自らの権威を維持する計算をしていると理解できる。(編集担当:如月隼人)

 

参考:・馬英九総統(中国語・動画あり)