台湾・蔡英文新総統の就任演説全文(第6回) 司法改革でも「全員参加型」を強調

 蔡総統は続けて、司法改革について語った。馬英九総統は、政策そのものだけでなく、政策を進める手法に対して、強い非難を浴びた。例えば2014年春に発生した「ひまわり学生運動」では、馬政権が中国大陸とのサービス貿易協定を、議会で強引に通そうとしたことへの反発が強かった(解説参照)。蔡総統はさまざまな改革について「人々の参加」を繰り返し強調した。

 新政権は 続けて、 積極的に司法改革を行います。これは、現段階で台湾の人々が最も関心を持っている問題です。司法は人々に近づこうとせず、人々に信頼されていない。司法は犯罪に対して有効な打撃を与えることができず、司法は正義の最後の防衛線である機能を失っている。これらが人々の基本的な感覚になっています。

 

 新政権の決意を現実のものにするため、私たちは今年10月に司法国是会議を開催します。人々が実際に参与して、社会の力を導入し、共に司法改革を推進します。司法は必ずや、人々の要求にこたえねばなりません。もはや、法律家のための司法だけであったのでは駄目なのです。全民の司法でなければなりません。

 

 司法改革も、法律家だけの仕事ではありません。全民が参与する改革です。私は司法改革がそうなると期待しています。

 

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◆解説◆
 台湾では、中国との取り決めについて「外国との条約ではない。したがって国会(立法院)の批准は必要ない」との“建て前”がある。具体的には国会で「反対」との採決が成立しなければ「賛成多数」として認められてしまう状況だった。馬政権は、大陸側との「サービス貿易協定」について、国会で議論を十分に尽くすと説明していたにも関わらず、「賛成多数、審議打ち切り、成立」に持ち込もうとした。

 

 多くの人々があれのどまでに怒ったのは、「民主主義をないがしろにした」ことが最大の原因だったと考えられる。国会を占拠した学生らが第一に要求したのは、国会の承認なしでは大陸側との協定が発効しない制度の樹立だった。

 

 実際に学生らは、王金平立法院長(国会議長)が、「(中国大陸側との協定には立法院の事実上の批准を必要とする(「『両岸協議監督条例 』 が成立するまで、サービス貿易協定の審議は行わない」と約束したことで、国会からの撤退を決めた。

 

 蔡総統も馬前総統の政治手法を強く非難してきた。そのため政権運営の理念として「人々をできる限り参加させる」ことを強調したと考えられる。

 

 問題は、立場の異なる多くの人々の意見を集約しようとすると、結論が出せなくなってしまう危険も高まることだ。

 

 かつて、李登輝総統には国内世論も、場合によっては米国の世論も、自らが目指す方向に引き寄せる手腕と胆力があった。陳水扁総統、馬英九総統には、そのような能力が不足していたと言わざるをえない。蔡総統は「全員参加型」の政治理念を前面に出しただけに、手腕が厳しく問われることになる。(編集担当:如月隼人)

 

関連:
台湾・蔡英文新総統の就任演説全文(第5回) 族群の違いを超えた台湾社会づくりを

 

参考:
蔡英文520就職演說全文(中国語)
(中国語)