台湾新政権「沖ノ鳥島」の主張を転換、「国連の決定に従う」

 中華民国・行政院(台湾政府)は23日、馬英九前政権の末期に浮かび上がった「沖ノ鳥島」問題について、島であるかどうかは国連機関の決定を尊重すると述べた。国連が結論を出すまでは、台湾として「法律上の特定の立場を持たない」とした。

 「沖ノ鳥島」問題で日台の緊張が高まったのは、横浜海上保安部の巡視船が4月25日、沖ノ鳥島の周辺海域で台湾漁船が違法操業をしたとして船長を逮捕し、船を拿捕したことがきっかけだった。

 

 台湾はそれまで、「沖ノ鳥島」について考えを特に示していなかったが、馬英九前総統は中国や韓国と同じく、沖ノ鳥島は島ではなく岩礁。したがって排他的経済水域(EEZ)の設定は認められず、日本が台湾漁船を取り締まったのは違法として、猛反発した。

 

 中華民国・行政院の童振源報道官は23日、沖ノ鳥島をめぐる問題について、「(EEZなどの問題を扱う)国連大陸棚限界委員会の決定を尊重する」と述べ、同委が結論を出すまでは台湾として「法律上の特定の立場を取らない」と説明した。

 

 台湾漁民の保護については、「政府として漁民を保護する態度については、いささかも後退しない今後、漁民保護の方法と政策について、最善を尽くす。現在、沖之鳥礁(沖ノ鳥島の台湾側呼称)付近にいる漁民を保護する船舶については、状況を見て再調整する」と述べた。

 

**********

 

◆解説◆
 蔡英文政権が発足して早々の、沖ノ鳥島問題についての政府報道官の発言は、馬前政権が引き起こした対日摩擦と、新政権の対日親和方針を示したようにも見える。

 

 しかし、蔡英文政権の狙いがそれだけだったとは考えにくい。台湾は国連から「追い出された」状態であるが、「国連の意思を尊重」と国際社会にアピールすることは、「台湾の良識」を訴えることになる。国際社会における台湾評価の向は、台湾にとって中国との交渉についても有利に働く。

 

 また、日本側が台湾漁船を取り締まったことで、台湾では日本に対する反発が発生した。「国連に従う」との説明は、台湾世論を鎮静化するのにかなり有効なのではないか。

 

 さらに蔡英文政権にとっては、「仮に国連が沖ノ鳥島を認めない、つまり日本のEEZ設定は認められない」との結果になった場合には効力を失うとして、日本と漁業についての「取り決め」を結ぶ選択肢も出てくる。

 

 日台は2013年、尖閣諸島周辺海域を対象に「日台漁業取り決め」を結んだ。日本側は「国と国との協定ではない」として、日本語訳では「取り決め」という用語を結んだが、台湾側は「台日本漁業協議」と呼んでいる。この場合の中国語の「協議」は、日本語の「協定」と同じだ。

 

 同「取り決め」は、中国にとって二重の意味で「痛かった」と考えられる。まず、自らが「自国領」と強調する尖閣諸島の扱いについて、台湾側が柔軟な姿勢を取ったこと。そして、日本と台湾が事実上の「2カ国協定」を結んだことだ。

 

沖ノ鳥島周辺海域について、日台が仮に何らかの「取り決め」を結べば、中国にとって極めて「いやな事態」となる。台湾としては実際に「取り決め」を結ばなくとも、「その気になれば、日本と合意することが可能」と揺さぶりをかけられることになる。(編集担当:如月隼人)

関連:

沖の鳥島:台湾が日本に対抗して大型船を増派、海軍出動の可能性も 日本は公船集結させ厳戒=台湾報道
参考:

沖之鳥礁爭議 新政府等聯合國決定(中国語)