オバマ大統領の広島訪問 中国外相「広島には注目するべきだ。しかし南京はもっと大切」

 中国の王毅外相は27日、オバマ米大統領の広島訪問について「広島は注目されてしかるべきだ。南京のことは、さらに忘れるべきではない」と述べた。

 

 中国政府・外交部(外務省)が公式サイトに王外相のコメントを掲載した。王外相は27日、広西チワン族自治区でオバマ大統領の広島訪問についてコメントした。現地では同自治区を世界に向けてアピールするイベントが開催中で、王外相も同イベント参加のために訪問していた。

 

 王外相は「広島は注目されてしかるべきだ。南京のことは、さらに忘れるべきではない。被害者には同情するべきだ。しかし加害者は自分の責任から永遠に逃れられない」と述べた。

 

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◆解説◆
 中国共産党及び同国政府は、日本が明治期から1945年までかかわった戦争を「日本による侵略戦争」と位置づけている。

 

 一方で、特に日中戦争を含む第二次世界大戦については、「日本の一部の軍国主義者が発動した」としながらも、米軍による被害について「日本の一般人民は、中国人民と同様に被害者だった」との立場だ。

 

 中国共産党は、日本を最後で最大とする外国の侵略者から国を守り抜き、真に独立した新中国を築くのは共産党にしかできなかったとの理屈を、自らの正統性の大きなよりどころとしている。

 

 1972年に日本と国交を正常化する際、さらにその後の両国関係の構築には、「なぜ、侵略者であった日本と、友好関係を構築せねばならないか」との理屈を、国内向けに説明する必要が出てくる。そのための理屈が「悪いのは一部の軍国主義者だった。その他の日本人は被害者だった」との言い方だ。

 

 中国が日本の政府要人の靖国神社参拝に猛反発するのも、以上の理屈による。中国にとってすれば、いわゆるA級戦犯は「軍国主義者」のシンボルであり、日本政府要人がA級戦犯も祀られる靖国人社を参拝すれば、「現在の日本政府に軍国主義者はいない。だから友好関係を構築できる」との自国向けの説明の根拠が崩壊してしまうからだ。

 

 一方で中国では中国では、インターネットへの書き込みを中心に、広島や長崎の原爆被害について「自業自得」と主張する主張も目立つようになった。中国当局としては、「戦争については日本人全員が加害者」との世論が強まると、国内向けと対日用の「主張のカード」をひとつ、失うことになりかねない。

 

 そのため、「日本には加害者も被害者もいた。しかし、中国では国民全員が被害者だった」と世論が最も好ましいということになる。王外相の上記発言も、中国当局の従来からの方針を踏襲したものと理解できる。

 

 なお、中国当局は日本で戦犯などに指定されなかった一般の旧軍人遺族などの靖国神社参拝については、「特に批判はしない」と表明してきた。「戦没した親族を思う遺族の気持ちに干渉すべき立場ではない」との説明だ。(編集担当:如月隼人)