台湾新首相、施政方針報告で「中華民国台湾」と繰り返す 大陸側で改めて警戒感

 台湾で、20日に就任した林全行政院長(首相)が施政方針報告書の中で「中華民国台湾」の表現を使う方針であることが分かった。中国側では警戒の声が出た。

 中国は、蔡英文新政権の対中姿勢に対する警戒を強めている。23日開始の世界保健機関(WHOの全加盟国で構成される「世界保健総会(WHO)」には、馬英九政権時に引き続き中国が“容認”したことになり、台湾(中華民国)はオブザーバーとして代表者を送ることができた。

 

 台湾代表の団長は林奏延衛生部長(厚生相)で、演説時には「中華台北(チャイニーズ・タイペイ)」と称した。台湾がスポーツを含め国際的イベントに代表を送る際に定着している呼称で、中国も容認する言い方だ。台湾側は中国を刺激することを避けたと見ることができる。

 

 台湾メディアの聯合新聞網によると、林全首相は「中華台北」の呼称について「不満足だが、どうにか受け入れられる」と表明。ただし、自らの名義で発表する施政方針報告書では「中華民国台湾」を用いる考えだ。

 

 同報告書の初稿では、外交方針を示す部分で「中華民国台湾」の呼称を3カ所用いたという。ただし、在外台湾人への対策を記した部分では「われら」または「台湾」の語を用いた。

 

 新浪網など中国メディアは、中国軍の研究・教育機関である国防大学の紀明葵教授が27日、同問題について、蔡英文政権の既定方針は「漸進式台湾独立」との警戒を表明したと報じた。紀教授は、蔡英文政権が「駐米大使」を任官したことが、「漸進式台湾独立」のスタートだったと論じた。

 

 台湾は、日米をはじめとして外交関係のない主要国に、「台北経済文化代表処」を設置して、相手国との意思疎通や実務処理を行っている。組織のトップは「代表」だ。しかし蔡総統は新政権発足に伴う代表の交代について、新旧の代表について従来の「駐米代表」ではなく「駐米大使」の肩書を用いた。

 

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◆解説◆
 中国側は蔡英文政権に対して、1992年に中台双方が「ひとつの中国」で合意したとされる「九二共識(92コンセンサス)」を認めることが、双方の関係を安定させ、発展させるための最低限の条件と主張し続けている。「九二共識」については、「存在する」と初めて紹介されたのが2000年であり、文書化もされていないため、台湾では「そもそも存在しない」との主張も根強い。

 

 蔡総統も「九二共識は存在しない」との立場だったが、総統選に出馬するにあたって、「九二共識」に絡む発言はしないようなった。5月20日の就任演説でも、92年の中国側との交渉で「若干の合意」があったと論じたが、「九二共識」の語は用いなかった。

 

 国民党は「九二共識」の存在を認める立場で、特に馬英九政権は「九二共識」を前提として、中国の関係を前進させた。

 

 ただし、馬前総統を含む国民党側は、「九二共識」の内容は「中国はひとつだが、台湾と大陸はそれぞれの別の立場である(一中各表)」と主張に対して、大陸側は「ひとつの中国が大原則(一中原則)」と主張するなど、「九二共識」の理解について、台湾側と大陸側にはかなり本質的な違いがある。

 

 林首相が用いる考えである「中華民国台湾」すなわち「中華民国の台湾」は、少なくとも馬英九政権が主張してきた「九二共識」の内容から逸脱するものではない。中国側で改めて警戒感が高まったとすれば、蔡英文政権に対して「疑心暗鬼」になっている状態を示すと理解できる。

 

 蔡英文政権も、中国との安定した関係の維持のために、細心の注意を示しているが、中国側の過剰反応を避けるためには、かなりの「綱渡り状態」が続きそうだ。(編集担当:如月隼人)

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