押し売りが「人さらい」と誤解され、住民に捕まって街路樹に「逆さ吊り」=中国

 浙江省メディアの江銭晩報は26日、「彼はなぜ、木に逆さ吊りになったのか」と題する記事を掲載した。

 同慈渓市内で23日、若い男が街路樹に逆さ吊りにされ、人々から殴られるなどの暴行を受けた。携帯電話を「押し売り」しようと民家に入ったことで「乳幼児さらい」と誤解されたという。

 

 発端は、男性が民家に入って携帯電話を「押し売り」しようとしたことだった。同市内に住む女性、Fさんは23日昼過ぎ、自室で8カ月になる息子に添い寝しながら、自分も昼寝をしようとしていた。家にはFさんと子しかいなかった。

 

 そこに、見知らぬ男が入って来た。Fさんはドアに鍵をかけていなかったという。男はFさんに携帯電話を示して「アップルの携帯だ。安くしとくぜ」などと言い始めた。Fさんは驚いて反応できず、掛け布団にくるまったままだった。

 

 男は、「ラチがあかない」と見たのか、掛け布団を引きはがそうとした。Fさんは息子のことが心配で、男から掛け布団を引っ張り返して息子をくるみ「出て行かないと、大声で人を呼びます」と男に言った。

 

 男はその後も、携帯電話を見せて「安くしとくぜ」などと繰り返した。数分間は繰り返したが、Fさんが全く反応しなくなったので、突然、部屋から出て行ったという。

 

 Fさんは恐怖と緊張で、男が去ったあともぼんやりしてしまった。「きっと、この子をさらいに来たのだ」と思えてならなかった。心配で気を失ってしまうような感覚がした。私が今、ここで気を失ったら、この子はどうなると思えた。

 

 そこで、隣室にいる友人のところまで行って、事情を説明して子どもをしばらく預かってほしいと頼んだ。Fさんは友人に子を渡したとたん、気を失ってしまったという。友人は「誘拐未遂だ」と驚き、警察に通報した。その後、警察官がやってきてFさんに事情を聴いたと言う。

 

 近所では「人さらいが出た!」との噂がたちまち広まった。噂には尾ひれがついた。「人さらいは、Fさんに薬を飲ませて朦朧とさせ、子どもをさらおうとした」ということになってしまった。

近所の若い男性が、あたりにいた「見知らぬ怪しい男」を見つけた。異常な雰囲気を察したのか、男は逃げ出した。「あいつが人さらいだ! 捕まえろ、それっ!!」――。

 

 人々が男を追いかけた。男は懸命に逃げたが捕まった。中国では乳幼児をさらう事件が多発している。多くは、子どものいない人に売り渡して利益を得る目的だ。プロの「乞食集団」に売り渡す場合も伝えられている。

 

 「乞食集団」は、子どもの体を傷つけて障碍者にしてしまうことが多い。その方が、物乞いがしやすくなるからだ。そういった報道に接するたび、人々は怒りをあらわにしている。「人さらい」を捕まえたことで、その場にいた人は「薬を使ってまで子どもをさらおうとしたとんでもない奴だ。子供をさらわれた親のためにも、痛い目に遭わせねばならない」などと言い出した。

 

 人々は、男性を街路樹に逆さ吊りにした。そして、殴るなどの暴行を加えた。集まった人は、その様子を携帯電話などで写真に撮り、罵声を浴びせかけた。

そのままだったら、男性はどうなっていたかわからない。しかしほどなくして知らせを受けた警察が駆けつけ、男性を木から下して連行した。

 

 慈渓市警察が調べた結果、男性が子どもを誘拐した、あるいは誘拐しようとした事実はなかった。また、母親に薬を使用した事実もなかった。

 

 慈渓市警察は、携帯電話の押し売りをしようとした男(51歳)を、住居不法侵入に該当するとして、5日間の行政拘留処分とした。さらに、男性を捕まえた首謀者として、23歳の男性1人を、「噂を軽率に信じて、他人に暴行を加えた」として、5日間の行政拘留処分と200元の罰金を科すことにした。

 

 なお、男が「押し売り」しようとしていた「アップルの携帯」は偽物であった可能性が高い。報道されてはいないが、正規品ならば「押し売り」という販売チャンネルは考えにくいからだ。

 

 Fさんは貴州省の出身で、慈渓市に住むようになって10年だ。自分の部屋に入って来た男が「逆さ吊り」になり、警察に保護される騒ぎになったことは、翌日まで知らなかったという。

 

 「噂を軽率に信じて他人に暴行した」として責任を問われた男性はFさんと同郷で、「人さらい探しと見せしめの刑」にとりわけ熱心に動いたとされる。(編集担当:如月隼人)

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参考:・他,为什么被倒吊树上(中国語)