原発事故後の日本産農産物の輸入禁止、台湾の駐日代表「続けているのは韓国、中国、台湾だけ」

 3日に台湾の駐日代表に就任した謝長廷氏は4日、台湾が原発事故による汚染を理由に現在も続けている東北5県からの農産物輸出禁止について「科学的評価にもとづくべきだ」と述べた。台湾メディアの中央通訊社が伝えた。

 謝代表は9日に日本に赴任する予定で、4日にはメディアとの茶話会を行った。話題にのぼった日本の東北5県からの農産物の輸入再開について、「政府が極めて迅速に決定するわけではない」とした上で「方向性は科学的評価だ」と述べた。

 

 具体的には、福島第一原発の事故が発生してからの5年間の間に、台湾で日本産農産物が放射性物質の汚染で不合格になった記録があるかどうかを再確認し、「もしなければ、台湾が輸入禁止を続けるかどうかは、ひとつの基準にもとづいて決めるべきだ」と述べた。

 

 謝代表は、現在も日本の東北5県からの農産物の輸入禁止を続けているのは、世界中で韓国と中国大陸、そして台湾だけだとも論じた。

 

 馬英九前政権は、日本産農産物の輸入再開に、極めて慎重な姿勢を示し続けた。新たに政権党になった民進党は環境問題には極めて敏感で、原発の危険性も強調する立場だ。しかし謝代表は、政府は感情論にとらわれるのでなく、科学的根拠に基づいて判断すべきだとの考えを示した。

 

 沖ノ鳥島の問題については「朝野とも(台湾)漁民の保護を支持している。しかし、どうしたら保護できるのか? 最初は(公船派遣などで)保護できるかもしれない。しかし、そのまま続けることはできない」と述べ、日本と交渉することで、台湾漁民の権益問題を解決すべきとの考えを示した。

 

 謝代表は、日台が7月に海洋実務会議を開催すると説明し、同会議で日本との話し合いで解決への道を探りたいと主張した。

 

台湾人慰安婦の問題について質問を受けると「台湾政府は、日本は謝罪と賠償をすべきとの立場だ。歴史には不愉快、あるいはやるべきではなかったこともある。その点について(台湾)政府の立場は明確だ。しかし、それらのことがらを理由に日本との交流を断つわけにはいかない。問題がただちに解決できるわけではない。ゆっくりと交渉していけばよい」と述べた。

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◆解説◆

 台湾で民進党が政権を奪還できたのは、馬英九政権による「敵失」に助けられた面が極めて大きい。考えてみれば、2008年に国民党に政権を奪われた大きな理由も、民進党側に「大きな失点」が相次いだことだった。そのため、民進党関係者が15年秋の統一地方選や16年1月の総統選に大勝したことに気をよくしている場合でないことは、痛感しているはずだ。

 

 民進党政権にとって今後、大きな問題になることが確実なのは経済だ。台湾経済は低迷を続けており、しかも格差の問題が深刻だ。さらに、馬英九政権下で中国経済とのつながりが極めて緊密になったので、中国が政治面における「切り札」として台湾経済に圧力を加える事態も想定せねばならない。

 

 中国や国民党勢力が、民進党政権を批判するもう1つの手段として考えられるのが、対日問題だ。台湾では親日的な感情を持つ人が多いが、「日本に屈した」、「政権は媚日だ」との感情は案外、激しやすい面がある。

 

 沖ノ鳥島問題については、「台湾漁船が日本に拿捕され、船長が逮捕された」というニュースが伝えられたとたん、台湾では不快感を示す論調が強まった。

 

 民進党新政権は、対日姿勢について、「基本的考え」については馬英九政権の立場を踏襲し、その上で現実問題としては日本との対決ムードの高まりを避け、対日交流で大きな成果を得ようとしているように見える。

 

 日台関係に最も大きな影響を与えるのは、中国という存在だ。日本、台湾の双方とも、中国との「間合い」を図りつつ、さらに国内世論の支持を得られるよう、極めて微妙な政治的判断を続けていくことが必要になる。(編集担当:如月隼人)

 

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【参考】・日本核災5縣食品進口 謝長廷:依科學標準(中国語)