南シナ海問題、国際法廷の判決間近 中国がフィリピンに提訴取り下げを求める、新華社も批判記事を続々

 中国が、南シナ海における中国の領有権主張の動きについて、フィリピンが「国際法違反」として常設仲裁裁判所に提訴したことに対して、極めて神経質になっている。8日には政府・外交部(中国外務省)が、裁判手続きを直ちに停止することを求める声明を発表した。その後も、新華社が続けて関連記事を出すなどしている。

 

 中国は南シナ海における領有権問題で、フィリピンやベトナムとも対立している。「島の領有権」については主張の食い違いがないインドネシアとも、「海の権益」を巡って緊張感が高まっている。

 

 中国は同問題について、「当事国による話し合い」または「2国間協議」で解決と、繰り返し主張していた。最大の理由は、米国の介入を避けることだった。

 

 さらに、2013年に同問題を国際司法機関である常設仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)に訴えることで、事態は新たな局面を迎えた。

 

 最近になり、「常設仲裁裁判所はまもなく同提訴についての判断を示す。中国に不利な内容になる可能性が高い」との見方が出始めた。

 

 中国政府はこれまでにも、同裁判の結果は受け入れないなどの表明を繰り返していたが、外交部は8日の声明でフィリピンに裁判手続きを直ちに停止するよう、初めて直接の言い方で求めた。

 

 新華社は9日「南シナ海仲裁案件:外国の専門家は中国の立場を支持」と題する記事を発表。「多くの国の専門家」が「フィリピンが一方的に仲裁裁判所に提訴したことは、紛争の解決の助けにならない」との考えを表明したとして、パキスタン、カンボジア、ドイツの研究者の意見を「普遍的認識」として紹介した。

 

 翌10日も、中国国際法学会がフィリピンの提訴には「六大誤謬がある」との文章を発表したと報道。さらに11日には改めて、米国在住の中国出身研究者による「中国は南シナ海の仲裁裁判所の案件の合理性と合法性を拒否する」との解説を紹介した。

 

 一方のフィリピンでは、ロドリゴ・ドゥルテ氏が30日に新大統領に就任する。ドゥルテ氏は「フィリピンのトランプ」とも呼ばれ、南シナ海問題についても「中国と戦争をする気はない」と発言したり、「南シナ海の(中国による)人工島にジェットスキーで行って上陸し、フィリピン国旗を立ててやる」と表明した。

 

 フィリピンのペルフェクト・ヤサイ次期外相は、同問題について、中国との対話を重視する意向を示し、中国側も歓迎する声明を発表している。ヤサイ次期外相は8日、中国がフィリピンに対して提訴取り下げを求める声明を発表した直後に改めて、中国との対話により問題を平和的に解決したいと発言した。

 

 中国は、南シナ海や東シナ海の問題で、これ以上の国際的孤立を避けたい。仲裁裁判所がフィリピンに有利な判断を示せば、他の国が提訴を起こす可能性もある。そのため、判決言い渡しまでのぎりぎりの段階になり、フィリピンに対して大きく妥協した案を示し、裁判を取り下げさせる可能性も否定できない。(編集担当:如月隼人)

 

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