雑記:上海ディズニー開業記念じゃないけどご紹介、「ミッキーにはれっきとした中国名があった」

上海ディズニーランドが16日に正式オープンしました。その記念というわけでもありませんが「ミッキー・マウス」にはれっきとした中国名があるのです。「米老鼠(ミー・ラオシュー)」です。

 

ここまでなら、「ああ、そうですか」で終わってしまうのですが、どうかもう少しお付き合い願いたい。まず日本語の「ミッキー・マウス」ですけど「Micky Mouse」をカナ書きにしました。英語の発音からかなり離れてはいるのですが、カナという表音文字があるからこそ、できる技です。

 

ここで中国語の「米老鼠」を改めて考えると面白い。後ろの「老鼠」は「ネズミ」です。「老」だからといって「年寄り」というわけではない。細かい話は端折りますが、現代中国語では、1文字の単語は、なんかおさまりが悪いということで、冒頭に別の1文字を追加することがよくあります。例えば「虎」は「老虎(ラオフー)」と言うのが普通です。

 

次に、「米(ミー)」の部分ですが、「ミッキーの『ミ』の音からだろ。あたりまえだよ」と、それを言っちゃあおしまいです。その通りなのですが、見逃せない点がある。中国人に「米」という姓の人がいるのですよ。

 

ものすごく多いわけではありませんが、ぽつぽついる。少なくとも、「私の姓は『米』です」と言って、「へええ、珍しいですね」とびっくりされるほど少ないわけではない。

 

中国では、外国人(ミッキーを含めて)ですけど、冒頭の1文字を中国人の姓として使われている漢字を使う場合が結構多いのです。

 

例えば、現在の共産主義の元祖の「マルクス」です。中国語では「馬克思(マークースー)」です。「馬」という名字は、中国人に結構多いですからね。言い方を変えれば、「馬克思」という名の中国人がいっても、まったくおかしくない。というか、結構多いはずです。

 

ちなみにドナルド・ダックは「唐老鴨(タン・ラオヤー)」です。姓は「唐」で、名は「老鴨」ということですね。ちなみに「唐」も姓として珍しくない。「老鴨」とは要するにアヒルです。

 

実在の人物の例として、歴史上有名な米国大統領を見てみましょうか。初代のワシントンは「華盛頓(ホワシェントゥン)」、リンカーンは「林肯(リンケン)」、ルーズベルトは「羅斯福(ルオスーフー)」です。「華」も「林」も「羅」も中国人の姓として、そう珍しくない。

 

さて、ここからさらにややこしくなるのですが、「中国式の姓名」を名乗っている人でも、その姓の起源は中国ではない、というケースが結構あるのです。

 

代表的な例としてまず、回族という民族の人に「馬」という姓が多いことがあります。回族とはイスラム系民族ですが、ウイグル族のように自らの言語を残しているわけではありません。容貌も漢族と格段に違うわけではない。「ちょっとアラビア風かな」と思える人が多いぐらいです。

 

ではなぜ、回族の人に「馬」の姓が多いのか。「ムハンマド(マホメット)」から取ったそうです。ムハンマドは現在「穆罕默徳(ムーハンモーデォー)」という表記が一般化しましたが、かつては冒頭部分を「馬」で書いたこともあるようです。また、回族の人では姓が「穆」の人もいます。

さらにさらに、ややこしいのは、姓が「馬」とか「穆」であっても、イスラム系の人とは限らない。つまり、それまでにも中国に存在した「馬」や「穆」という姓を、新たな外来系の名を表記する際に使ったということです。

 

ついでに言えば、満族(満洲族)の人には、姓が「金」である人が多い。こちらは意訳です。清朝皇帝は「愛新覚羅」の一族。現在の中国語読みでは「アイシンヂュエルー」となりますが、本来の満洲語では「アイシンギョロ」と発音。このアイシンは満州語で「金」ということです。そこから取った。

 

さらに、モンゴル族の人は「包(バオ)」とか「洪(ホン)」という人が多い。「包」は、チンギス・ハンの氏族の「ボルチギン」に由来します。つまり「ボルチギン」一族の人が、中国語名の姓に「包」を使うようになったということ。

 

「洪」は、チンギス・ハン以降、モンゴル皇帝の第一皇妃になることに決まっていた「ホンギラート」一族の氏族名です。

 

こういう「姓の扱い」を見ても、日本文化の場合には彼我を区別する傾向が強いのに対して、中国の場合には、溶け合わせてしまう感覚が旺盛だなあと感じてしまいます。