中国の「名外交官」が交通事故死  呉建民氏77歳、「排他的民族主義」を強く批判したばかり

 駐フランス大使や、外交官育成を目的とする外交学院院長などを歴任した呉建民氏が18日午前4時ごろ、湖北省武漢市内で死亡した。交通事故だった。呉氏は現在も、外交問題専門家として盛んに発言していた。安直に戦争を論じることや、自国を含め排他的民族主義を強く批判していた。

 呉氏は1939年に重慶で生まれた。北京外国語学院でフランス語を専攻し、外交部(中国外務省)に入省。1971年には、中国が初めて組織した国連代表団に加わり、通訳や秘書を務めた。また、毛沢東主席や周恩来首相のフランス語通訳も務めた。

 

 その後は外交部の報道官などを務めた後に、駐オランダ全権大使や駐フランス全権大使を務めた。2003年から08年までは外交学院の院長を務めた。

 

 18日早朝には、特別講義のために武漢大学に招かれて、自動車で移動中だった。トンネル出口で事故に巻き込まれた。呉氏以外に、同乗していた武漢大学信息学院(情報学部)の朱暁馳教授が死亡し、大学関係者や呉氏の秘書、運転手が負傷した。

 

 呉氏は12日、北京で開催された米中大学シンクタンク・フォーラムで、米中両国ともポピュリズムと排他的民族主義を強く批判する講演を行ったばかりだった。呉氏は現在の中国でみられる、戦争を安直に論じたり好戦的な発言をする風潮を批判していた。

 

 12日の講演では、米中には対立点があり、今後もありつづけると指摘。重要なことは、対立を制御不能な危機的状況にしてしまわないことだと論じた。

 

 さらに相手との対立を大きくしてしまう大きな要因に、自国内でもポピュリズムと排他的民族主義があると指摘。民族主義を構成する考え方としては、自国への熱愛と排他主義があると分析。自国を熱愛することは悪くないが、排他主義は自国で発生した問題をすべて他国のせいにして「私は正しい。悪いのは相手だ」との考えをもたらすと指摘した。

 

 呉氏はあらためて、ポピュリズムと排他的民族主義が結合することは極めて危険と主張。排他的民族主義が盛んな状況で、ポピュリズムを特徴とする政治指導者が出現すれば、(民衆の支持を確保するために)政治が民族主義の虜になった状況が出現し、理性を逸脱していくことになると指摘した。

 

 呉氏は、ポピュリズムと民族主義が結合している事例として、米大統領候補のトランプ氏を挙げた。次に、民族主義とポピュリズムの問題により、中国でも非常に危険な状況があると指摘した。呉氏は、中国における民族主義者はしばしば「愛国」を旗印にして「愛国無罪」などと主張すると論じた。

 

 さらに、ポピュリストは「民のために」というふりをすると指摘。呉氏は、ポピュリズムの本質は「反改革」であり、民族主義の本質は「反開放」であり、中国が命運をかけて取り組むべき改革開放とは対立するものだと主張した。(編集担当:如月隼人)

 

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【参考】・吴建民最后的疾呼:民粹、民族主义本质是反改革开放(中国語)