中国「住民自治、民主の星」の村長が不正疑惑で身柄拘束=広東・烏坎村 

 中国メディアの華商報によると、広東省・東海鎮烏坎村の林祖恋村民委員会主任(村長)が17日、収賄の疑いで警察に身柄を拘束された。

 林村長は2012年、土地問題をめぐる住民運動の結果、住民の意向を受け入れて実施された選挙で当選した結果就任したことで、「中国の民主化の星」などとも言われた存在だった。

 

 林村長の身柄を拘束したのは、烏坎村が属する県級陸豊市公安局(県警)。同県警は18日午前5時12分、SNSの公式アカウントで「東海鎮烏坎村の多くの村民に対する公開書状」と題して、林村長の身柄拘束について説明した。

 

 公開書状は「烏坎村(共産党)党総支部書記・村民委員会主任の林祖恋は職権を利用した収賄の疑いで、2016年6月17日に陸豊市人民検察院の捜査と強制措置を受けた。われわれは全村民に、司法機関が作業を進めることを積極的に支持することと、社会の安定した環境を共に維持することを呼びかける。少数分子による扇動に利用され、過激な行動をしてはならない。違法な犯罪行為、特に破壊行為に対して警察は、法にもとづき厳しく対応する。決して手を緩めない」と、住民に対する威嚇的な文言を並べた。

 

 烏坎村では2011年、当時の村幹部が住民から不正に土地を徴用して使用権を外部業者に売り、代金の多くを着服したとして、住民の強い抗議活動が発生した。9月には、警察が抗議集会を解散させようとして衝突が発生し、双方に負傷者が出た。

 

 

 当局側は12月9日、土地問題を巡り村の幹部2人に不正があったとして解任を発表。一方で、問題が発生してから住人側が選出した臨時代表理事会を非合法組織と断定し、薛錦波副会長ら5人の身柄を拘束し、「問題は解決した」と宣言した。

 

 当局側の発表に住民は怒り、抗議運動をつづけた。同月11日、身柄を拘束されていた薛副会長の容態が急変し、病院に搬送されたが死亡したと発表した。、警察側は村への道路を封鎖し、電気、水道、食料の供給も止め、メディアが村で立ち入ることも禁止した。住民側はバリケードを築いて対抗した。住民は、インターネットを用いて状況を外部に伝えたため、同村の抗議活動は世界的に知られるようになった。

 

 当局側は12月末に態度を急変し、住民の要求を受け入れる代わりに抗議活動を中止するよう呼びかけた。住民も当局側提案を受け入れ、混乱は収束した。2012年2月には、新たな村幹部を決める選挙が実施され、抗議活動の代表的人物の1人だった林祖恋氏が当選した。

 

 中国では住民選挙で村長など村幹部を選ぶ方式が定着している。しかしほとんどの場合、共産党の承認を得た人物しか立候補できない状況だ。まして、当局に対する抗議活動の中心的人物が立候補を認められ当選することは異例だった。そのため、烏坎村のケース(烏坎事件)は、住民自治の民主化が進む先駆けになる可能性があるとして注目された。

 

 しかし烏坎村ではその後、住民側が求めた「土地の取り戻し」はなかなか進まず、林村長に対する抗議活動も発生し、住民運動を安直に認めることを批判する意見も出始めた。

 

 当局側が12月末に態度を急変させたのは、共産党広東省委員会の汪洋書記(当時)の判断だったとされている。汪氏はその後、党重慶市委員会書記を経て、現在は副首相の地位にある。

 

 汪洋副首相は、中国共産主義青年団の出身で、胡錦濤前主席、温家宝前首相、李克強現首相につながる政治家だ。「人民が幸せになるのは共産党や政府による恩賜ではない。幸せを追求するのは人民の権利であり、党と政府の責任だ(幸福非恩賜論)」などの開明的な主張で知られる一方、失言が目立つとの批判もある。

 

 烏坎村の林村長の収賄疑惑が、汪洋副首相の政治的立場をめぐる権力闘争に関係してくる可能性も、否定できない。(編集担当:如月隼人)

 

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【参考】・乌坎民选村主任被查(中国語)