台湾・故宮南院がジャッキー・チェン寄贈の円明園・十二獣首銅像のレプリカ撤去へ

台湾・国立故宮博物院の林正儀院長は22日、嘉義県に建設された同博物院南院の敷地内に設置されていた、北京の円明園にあった十二生肖獣頭像のレプリカを撤去する方針を改めて表明した。同レプリカは、人気俳優のジャッキー・チェンさんが寄贈したものだ。

嘉義県の故宮南院は2015年12月に開業。台北・故宮の主要収蔵品が清朝皇帝の所蔵していた、中国歴代の芸術・文化財の「逸品中の逸品」であるのに対し、故宮南院はアジアの芸術文化全体を広く扱う方針が特徴だ。

ジャッキーさん寄贈の十二獣首銅像を展示することについては、賛否両論があった。中国では十二獣首銅像が1860年のアロー戦争の際に北京を攻めた英仏両軍に略奪されたと信じている人が多く(解説参照)、十二獣首銅像は愛国心をかきたてる作用を持っている。そのため、故宮南院でのレプリカ設置には「文化における(大陸との)統一戦だ」などの批判が出た。これまでにレプリカに赤いペンキで批判の文字が書かれたこともある。

台湾において故宮博物院は、政治面においても特殊な扱いを受けており、院長は閣僚の一員とされている。馬英九政権下で院長を務めた馮明珠氏は、「十二獣首銅像の展示はアジア文化を象徴する意味がある」、「十二獣首銅像は現代における模倣作品であり、贋作ではない」、「アジアの人が十二獣首銅像を鑑賞すれば、自分の干支に思いを馳せるだろう」と、展示を認めた。

民進党の蔡英文総統に任命された林院長は「就任してから各界の意見を聴取したが、いずれも撤去に賛成だった。芸術関係者や収集関係者は『芸術性に乏しい』との意見だった。一般大衆は『政治における論争の的』との意見であり、中庭の目立つ場所に置くべきでないと主張している」と表明した。

故宮博物院はこれまで十二獣首銅像の問題について、9月末に公開討論会を開催した上で、方針を決めると説明していた。林院長は同問題について立法院(国会に相当)で質問を受け、撤去することは確定していると答弁。討論会では撤去の時期と、撤去後の扱いを話し合うと述べた。

林院長はさらに、十二獣首銅像の寄贈受け入れについては、正規の手順を踏んでいないと説明。そのため、同銅像は故宮にとって文物(芸術品・文化財)ではないと主張した。ただし、故宮にとって「財産」であることには違いなく、各地で開催する展示会に出品する可能性はあるという。

中国メディアの海峡導報は23日付で「文化の台湾独立が黒い手を伸ばす」との題の論説を掲載して、十二獣首銅像の撤去を批判。中国新聞社も24日付で、「台湾社会の病気は重い」などと銅像撤去を酷評した。

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◆解説◆
ジャッキーさんが寄贈した十二獣首銅像は、清朝の雍正帝や乾隆帝らが整備した離宮である円明園内に設置されていた。当初は獣首人身の像で、獣首の部分は干支にもとづく12種の動物だった。中国では1860年のアロー戦争の際に、北京を攻め円明園を破壊した英仏軍により略奪されたと信じられている。

実際には、破壊直後の円明園を報じた新聞にも像の写真がある。清朝末期の事実上の支配者となった西太后はいったん円明園の再建に着手しており、銅像はその際に撤去されたとみられている。1930年前後に北京で撮影された獣首人身の像の写真が残っている。

1980年代から、海外のオークションで十二獣首銅像の一部が売り出されるようになり、中国企業や中国人が落札することが多くなった。中国人企業家が落札した上で、「中国から略奪されたものだ」と主張して、支払いを拒絶するなどの問題も出た。

現在のところ、牛、虎、猿、豚の頭部の像は中国企業の保利集団が入手し、同集団参加の北京保利芸術博物館で展示されている。馬はマカオでカジノなど娯楽産業を手掛ける何鴻燊(スタンレー・ホー)氏が購入し、中国政府に寄贈。鼠とウサギはフランス人が入手し、中国政府に寄贈した。龍、蛇、羊、鶏、犬の頭部は現在も見つかっていない。

十二獣首銅像の海外流出は前後の経緯からして、中国人が頭部を切断して売りさばいたと解釈するのが自然だ。(編集担当:如月隼人)

 

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