ナシ族の古都、観光誘致のため「フランス風の村」の開発計画でブーイング=雲南省・麗江

ナシ族の古都として知られる雲南省の麗江市当局が、同市内の白沙鎮を地中海部フランス風のレジャー村に“改造”する工事を始めたことで、中国では批判が相次いでいる。

麗江市当局は9月、市内各所で重点開発プロジェクトの起工式を行った。白沙鎮のプロジェクトは、「文化の集積地、水源の保養地、生態の緩衝地」にする計画で、大規模な商業開発をするのではないとした。

しかし白沙鎮の開発の名称は「フランス地中海・麗江レジャー村建設プロジェクト」だ。そのため、ナシ族の古都の風貌を一変させる計画との批判が出た。

地元の雲南省民族学会ナシ学研究委員会も、「白沙鎮はかつて、麗江の政治・軍事・文化の中心だった。ここに「『フランス地中海・麗江レジャー村』を建設することは、ナシ族文化の全体性と真実性を深刻に破壊する恐れがある」として反発している。

プロジェクト推進の担当企業である不動産開発会社の麗江徳潤地房開発有限公司の劉暁天総経理(社長)は、「フランス地中海・麗江レジャー村建設」は、起工式の際の仮の名。プロジェクトの正式名称は決まっていない」と説明。「フランス地中海』というのは、参画するホテル運営企業の「フランス地中海クラブ管理集団公司」の略称と述べた。
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◆解説◆
麗江の旧市街は1997年、ナシ族独特の街並みが保存しているとして、世界遺産に登録された。かつての地震により傾いてしまった民家もあるが、古く貴重な文化を残していることには変わりない。

ナシ族の人口は約30万人で、チベット・ビルマ語族のイ語グループに属する。ナシ族の文化については、象形文字であるトンパ文字を伝えていることで知られている。トンパ文字は「世界の記憶」にも登録されている。ただしトンパ文字は一般人が使った文字ではなく神職者が専門に使った文字で、権威を守るために広く普及させることはしなかったとされている。

ナシ族については、音楽文化についても極めて興味深い。彼らが伝えてきた合奏の「ビェスシリ(漢字表記は白沙細楽)」では、モンゴル民族の間で「ホブス」として伝わる撥弦楽器も使われてきた。ナシ族は同楽器を「ソグド」と呼んでいる。

元の第5代皇帝になったフビライは即位前、南宋を包囲するためにモンゴルからチベット東部を迂回して雲南に軍勢を進めたことがあった。雲南で強い勢力を持っていたペー族が樹立した大理国はフビライに抵抗した。ナシ族はそれまで、大理国に押さえつけられている状況だったこともあり、フビライに協力した。

フビライは大理国を降伏させることに成功。ナシ族を表彰するために、楽人を贈ったとの記録がある。このため、内モンゴルなど中国の音楽史研究者は、ナシ族に伝わる「ソグド(=ホブス)」の起源を、フビライが贈った楽人が使っていた楽器と主張している。

ただし、編者の考えでは、フビライが率いた軍勢は、モンゴルでも東部の諸部族だったという点に問題がある。「ホブス」は中央アジアからモンゴルにもたらされた楽器で、モンゴルの中でも、西部の諸部族に広まった楽器だからだ。

大理国の周囲は当時、銀の産出地として知られていた。元代には、銀山開発のために、現在の新疆ウイグル自治区から技術者を移住させたとの記録がある。ナシ族のソグドはモンゴルからもたらされたのではなく、現在の新疆ウイグル自治区からの移住者によってもたらされた可能性がある。(編集担当:如月隼人)

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