中国人にアイデアをパクられたが、それはそれで嬉しかった


前回の続きということで、中国でTシャツに書かれている文字の話です。


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雲南省に旅行をしました。まず北京から列車で省都の昆明へ。当時は60時間かかりました。ダイヤ上は、もう数時間早くつくはずですが、「60時間ぐらい」というのが常識でした。長旅の間に会話するようになった車掌さんに「いつも60時間かかるなら、ダイヤを現実に合わせた方が合理的では」と言ってみたら「ダイヤ通りに到着することもある」ということでした。


列車が昆明市郊外で止まってしまい1時間程度動かなくなった。すると乗客のうちの何人かが車掌さんに交渉。「ここで降りた方が家に近い。降ろしてくれ」と言い出した。中国の列車は最新式の車両を除き、ドアが手動で車掌さんが中から鍵をかけます。車掌さんもほどなく「では、安全には十分注意するように。すぐに線路の外に出るように」と念を押して、乗客数人を降ろしました。いやあ、のどかな時代だったなあ。


それはさておき、昆明市内では貧乏旅行の外国人がたまる宿に泊った。日本人も大勢いました。話を聞くと、旧市街に、客がリクエストした文字をTシャツにプリントしてくれる店があるとのこと。「そりゃ、おもしろそうだ」ということで、市内観光のついでに立ち寄ってみました。


小さい店で、見本のTシャツがいっぱいぶら下がっていた。注文してから1、2時間で出来上がるとのこと。さっそく注文することにしました。私が指定した文字は


同志們 排隊吧!


日本語では「同志たち、列に並べよ!」です。いやあ、行列なんかだと、割り込みが当たり前の世界でしたからねえ。バスに乗る際なんかには、列を作るということすらない。乗車口に我先に突進です。そうそう、最近の大都会ではずいぶん改善されてきたという話を聞きます。念のため。


普通、Tシャツの文字は胸側に入れるのですが、割り込みなんかをしようとする奴に見せるためですから、店の親父さんには「背中側にプリントするように」と念を押した。親父さん、最初はキョトンとしていましたが、すぐに分かって大笑いしだした。そして「その通りだ。外国人は列に並ぶ。中国人は並ばない。こんな程度の低いことではダメなんだが、なかなか直らないビョーキだ」なんて言い出して、握手を求められました。


安かったので10枚作ってもらい、自分が着るだけでなく、おみやげにもしました。


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月日は流れ、最近になりサーチナ社内で編集部内の好青年、K君と話をしていたら、雲南旅行の話になりました。K君いわく「昆明市に行ったら、『同志們 排隊吧!』とプリントしてあるTシャツを売っていて、おもしろかったので買っちゃいましたよ」――。


あれえ!? と思って聞いてみて、K君が昆明に行ったのは、私が旅行した数年後ということが判明。さてはあの親父、人のアイデアをパクって商売に使ったな。ま、悪い気分はしなかった。「列にならべ」Tシャツを注文した時、親父さんに大受けした時の様子を思い出して、嬉しくなりました。